東雲製作所

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リターンを定量的に比較せよ――バフェットの銘柄選択術感想

 オマハの賢人ウォーレン・バフェット。10万5000ドルを元手に始めた株式投資で800億ドル以上の富を築いた、世界で最も成功した投資家である。そんなバフェットの具体的投資術を解説した本が『億万長者をめざすバフェットの銘柄選択術』(メアリー・バフェット、デビッド・クラーク著、井手正介・中熊靖和訳、日本経済新聞社だ。
 ワークブック形式なので、本書の通りに各種指標をチェックしていけば、バフェットと同じ基準でその株が投資対象として適しているかチェックすることができる。
 バフェットは素人にはインデックスファンドを買うよう薦めているのだが、それでも個別株を買うと言うのなら、少なくとも本書は読んでおくべきだ。

 本書で最も重要な主張は、どの投資のリターンが高いか定量的に比較して投資先を決めろというものだ。
 先進国インデックスファンドを長期保有すれば、かなりの確率で年率5%程度のリターンが得られるし、新興国インデックスファンドは価格がジェットコースターのように暴れはするものの、平均すれば年率7%程度のリターンは見込める。

主要な株価指数・インデックスのリターン (毎月更新) - myINDEX


 もし個別株を買うのなら、割安だから、増収増益で値上がりしそうだから、配当が高いからといったふわっとした理由で買ってはいけない。きちんと予想されるリターンを計算し、先進国インデックスファンドの5%より高いリターンが見込めるのでなければ、買うべきではない。

 バフェットが確実なリターンを算出するために生み出した概念が、消費者独占型企業だ。消費者独占型企業とは高いブランド力を持っている等の理由で、他の企業と価格競争をせず、安定した収益を上げることができる企業のことだ。具体的にはコカ・コーラフィリップ・モリス、アメックスのような企業だ。
 これらの企業は安定して高収益を上げることが見込めるため、債権のように将来のリターンを見積もることができる。バフェットがコモディティ型企業と呼ぶブランド力がない製品を扱っている企業も高収益を上げることはあるが、市場環境の変化によって収益が大きく変動するため、リターンを見積もることができない。バフェットは高確率で高いリターンが見込める企業にしか投資しないのだ。

 

 高いリターンの原動力となるのが、安定的に高い株主資本利益率(ROE)と安定成長する1株当たり利益(EPS)だ。
 私は本書を読むまでは、割安度の指標である株価収益率(PER)こそが重要だと思っていた。だが、PERは買う時一回だけしか効かないのに対し、ROEが生み出す利益は毎年指数関数的に積み上がっていくので、長期投資をするならROEの方が断然重要なのだ。
 私は先月、異様にPERが低い銘柄を発見して思わず買った後に急落し、「何でこんな割安な株が値上がりしないんだ! 」と首をひねっていた。本書を読んで改めて各種指標をチェックしてみた所、ROEがボロボロであることが判明した。低PER企業は、将来PERが平均並みに戻れば値上がりするが、他の投資家がその程度の企業だと思ったままだと低いPERが維持され、株価は上がらないのだ。
 皆さんは私と同じ轍を踏まないためにも、個別株を買う前には必ず本書を熟読し、ワークシートで期待収益率を算出して欲しい。

 

 安定して高い利益率を生む株は、当然ながら値段が高くなる。割高な値段で買ったのでは、儲けることができない。そのためバフェットは市場全体が落ち込んだ時や、企業が一時的な要因で業績が落ち込んで株価が値下がりした時に買うことで、巨万の富を築いた。
 だが、株価が落ち込んでいるのが一時的な原因によるものなのか、このまま業績が低迷し続けるのか見分けるのは、素人には難しい。
 そのため、優良企業を日頃からチェックしておき、市場全体が落ち込んだ時に買うのがもっとも安全だ。

 

 2018年5月末現在、日本の株式市場は2月の下落から立ち直り、市場全体が落ち込んではいない。市場ではやり手のファンドマネージャーや百戦錬磨の投資家達が、少しでも割安な銘柄はないかと鵜の目鷹の目で各種データをチェックしている。
 市場平均より賢い人以外、個別株は買わない方が無難だろう。

 

億万長者をめざすバフェットの銘柄選択術

億万長者をめざすバフェットの銘柄選択術