東雲製作所

東雲長閑(しののめのどか)のよろず評論サイトです。

とらとらとらとらとらセキララ陰陽通信作家がスウィートなわけがな

バニラ A sweet partner アサウラ 集英社スーパーダッシュ文庫
ものすごく後味の悪い終わり方なのだが、『犬はどこだ』等と同様、弱者の暴力という難しい問題を主題にしている以上、すっきりさせないことが、誠実な態度なのだと思う。
ただ、もしかしたら、作者はこれをすっきりした終わり方として書いたのかも知れない。

とらドラ4! 竹宮ゆゆこ 電撃文庫
ベルサイユのばら』のオスカルに「血にはやり武力にたけることだけが男らしさではない。心やさしくあたたかい男性こそが真にたよりになる男性なのだということに気づくとき…… たいていの女はもうすでに年老いてしまっている」という名言があるのだが、現代風に言うなら、どきどきさせられる異性より、心温かくなる異性の方が良いぜ、という見解になり、おそらく三十くらいにならないと、そういう考えに至らないのではあるまいか。
そう考えると、ホロさんがどきどきを求めるのも、作者が若いからかも知れない。

森口織人の陰陽道 おかゆまさき 電撃文庫
ドクロちゃんと比べると、撲殺がない分だけ変さが足りないと思ったのだが、あとがきを読むと、作者は意図的に変さを抑制したようだ。
語り手の設定が面白く、今後、大きな話になっていくことを予感させられる。

とらドラ5! 竹宮ゆゆこ 電撃文庫
このシリーズは時折ものすごく文学的な隠喩を使うのだが、この巻のソースのシミも鮮やかな隠喩だなあ。
三十路の心理もものすごく生々しく描かれている一方で、大人の不条理で強大な力に傷つけられ、それでも何とか立ち向かっていこうとする高校生の心も生々しいままちゃんと覚えているところが作者の大した所だと思うのですよ。

ラス・マンチャス通信 平山瑞穂 角川文庫
第一章がものすごく変なので、このまま「地球の長い午後」みたいな感じで突っ走るのかと思いきや、第二章は一転して現実にありえる感じになったりと、リアリティの水準が茫洋としている。
主人公がネガティブに流されていく感じがポストエヴァっぽいなあ。

とらドラ6! 竹宮ゆゆこ 電撃文庫
この巻の大河は非常に格好良かったので、「大河好きな人はみんなマゾ」という発言を撤回し、大河ファンと大河にお詫びします。
ラスト付近のアドレナリンの迸る展開がすばらしく、現時点でのシリーズ最高傑作だと思うのだが、もっとも感心したのは、何もないと思ってたところに、意外かつ納得のいく伏せカードがあったところだ。

とらドラ7! 竹宮ゆゆこ 電撃文庫
全ての伏せカードがめくられて、もはや引き返せなくなった第七巻。
大河は暴虐の限りを尽くしていた初期と比べて随分成長して、頑張っているのだが、うっかり本心を漏らしてしまうせいで、結果的に優位な立場に立ちつつある所がずるいと思います。(大河はずるくないのだが、作者に優遇されている所がずるいと言うか。)

"文学少女"と神に臨む作家 (下) 野村美月 ファミ通文庫
性悪説の立場から、性善説を信じている奴なんて馬鹿だけだ、みたいなことを書く人がときおりいて、いや、それはそれで一方的な考えなんじゃないのかなあともやもや思っていただけに、268頁の啖呵には胸のすく思いがした。
結局のところ、このシリーズって、愛には様々な形があるということを書き続けてきたんだなあ。

俺の妹がこんなに可愛いわけがない 伏見つかさ 電撃文庫
最近、ライトノベルでも恋愛以外の関係にスポットを当てた作品がぽつぽつ出てきており、本作はタイトル通り妹との関係に焦点を当てているのだが、恋している人のために頑張る場合、その人と恋人になれるかもという下心が多少なりともあるのに対し、妹のために頑張っても、何の見返りもない、にも関わらず頑張っていることから、妹のために頑張っている本作のヒーロー、高坂京介は凡百のヒーローより格好よいといえるのではあるまいか。
元来おたくじゃない人の視点で書かれているので、全然おたくじゃない人にもおすすめである。

とらドラ8! 竹宮ゆゆこ 電撃文庫
竜児の心境がものすごくリアルで、自分の古傷をえぐられてしまい、血の涙を流す思いで読んだ。
みなが「竜児は私のもんだ! 」と叫んで殴り合えばすっきりするのだろうが、みな他人のためにしか怒らないところが優しくて不器用だよな。

セキララ!!2 花谷敏嗣 ファミ通文庫
おおっ、つまりこれは『偽の主人公』が主人公の小説なんですな。
二巻でも、相変わらずブタマルGTさんが素敵すぎる。