東雲製作所

東雲長閑(しののめのどか)のよろず評論サイトです。

銀色とらのためのさよならランチ感想

中村美里選手がライトノベルに出てくるキャラクターっぽいなあ。


初心者のための「文学」 大塚英志 角川文庫
三島と同様に、太宰も「戦争にわくわくする「私」を書いた」作家だという指摘に特に感心した。
大塚氏は、「象徴的に人を殺す物語」を描くことで、現実の暴力を代替する道を選ぶと宣言しているが、「象徴的に人を殺す」というわくわくするエピソードなしでも面白い物語を描くことで読者に「現実の暴力」以外にも成長する道はあるということを指し示すという道もあると思うのですよ。

銀色ふわり 有沢まみず 電撃文庫
話の構造自体はこてこての泣かせ系なんだけれど、人間関係とは何かを問う、極めて哲学的な話でもあり、そちらの方でより絶賛する。
270ページの戸荻さんとの会話が素晴らしく、人間関係というものは、不断に移り変わり、時折強烈な光を放つものだと感じ入った。

とらドラ3! 竹宮ゆゆこ 電撃文庫
相手のことを好きになるのは、(1)少数の強烈な出来事がきっかけでなる、(2)単純に一緒にいた時間の長さで決まる、という二通りの説があるが、大河と竜児の関係は、ライトノベルには珍しく後者の説に立っているようだ。
実乃梨派の私から見ると、大河好きな人はみんなマゾに見えるのだが、違うのだろうか。

フリーランチの時代 小川一水 ハヤカワ文庫
幼年期の終わり」を描いた短編集なのだが、終わり方が、あっけなく終わったり、難産の末終わったり、個人的に終わったり、個人の力の及ばぬところで終わったりと色々な終わり方をするのが面白い。
いつもながら、発想の斬新さに驚かされるのだが、特に、『千歳の坂も』のいつの間にか不老不死になってしまうというアイデアには完全に盲点を突かれ、目から鱗だ。

さよならピアノソナタ杉井光 電撃文庫
三人のヒロインはそれぞれに魅力的であり、特に神楽坂先輩の格好良さは素晴らしいのだが、こと、可愛さという点では、新キャラのユーリが一番ではないだろうか。
姿・形が問題じゃねェ、問題なのは「魂」さ!! という訳で、私も作者が作品に込めた魂を汲み取るような読み方ができるよう精進したいと思います。