東雲製作所

東雲長閑(しののめのどか)のよろず評論サイトです。

不気味な多重キラーの謎感想

多重心世界シンフォニックハーツ上 独声者の少年 永森悠角川スニーカー文庫
ぽこぽこ評論が書けそうな、格差社会やネット人格等々、現代社会の映し鏡のような設定がいかしており、また、個々のキャラクターの果たすべき役割が明確で、キャラとして軸がぶれてない!
それにしてもキャラが一〜五重人格という設定だと、キャラクターを通常の三倍も考えなくてはならない訳で、私がもしこの設定で書くとしたら三重人格で手一杯になるであろう。

不気味で素朴な囲われた世界 西尾維新 講談社ノベルス
言葉遊び連発の掛け合い会話が抜群に面白く、「文字のみから成る」という小説の特性を生かす方向で突き詰めると、こういう小説になるのかも、と思った。
なので、殺人事件など起こさずに、一冊丸々馬鹿会話が続くだけな方が良かったのだが、それこそが「不気味で素朴な囲われた世界」からいつまでも抜け出せない人間の嗜好なのだろう。

ドラゴンキラーあります 海原育人 C★NOVELSファンタジア
されど罪人は竜と踊る』『狼と香辛料』風味みたいな感じでコンビを組んだ二人のやりとりが楽しい。
ココに影響されてどんどん口が悪くなっていくものの、そうは言っても、根本的には純情なリリィがかわいらしい。


昨日見た「NHKスペシャル 100年の難問はなぜ解けたのか〜天才数学者 失踪の謎〜」は年間ベスト級の傑作だった。
ポワンカレ予想の解説と、それに挑んだ数学者達のドキュメンタリーである。
何と言ってもすごかったのが、ペレリマン博士がどういう手法でポワンカレ予想を証明したのか、という下りで、体に戦慄が走り、涙が出た。
SFとしてもミステリーとしても完璧な結末である。
こんな素人向けに分かりやすく希釈した説明を聞いただけでもこんな衝撃を受けるのだから、実際に証明したペレリマン博士の人生が狂ってしまうのもむべなるかな。

ちなみに、一本足の蛸のコメント欄によると、ニコニコ動画で見られるらしい。私はニコニコ動画を見たことがないので確かめてはいないが。