東雲製作所

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メイドヤクザボーイズの思い出は衰退しましたの感想

デッドエンドの思い出 よしもとばなな 文藝春秋
作者はあとがきで「つらく切ないラブストーリーばかり」と書いているが、私にはむしろ幸せな部分が心に残った。
恋愛小説は異世界の出来事のように感じることが多いが、本作は自分と地続きの場所で起きていることのように感じた。

メイド刑事 速見裕司 GA文庫
燃え小説というわりには燃えより水戸黄門的定番の面白さが先に立っているのは何故だろうと考えるに、通常の燃え小説は主人公の弱者が圧倒的強者に立ち向かうのに対し、本作は強者をバックに持つ主人公が小悪党を叩きのめしているからではないかと思った。
そういう意味で第3話は燃える展開だった。

ヤクザガール・ミサイルハート 元長柾木 ゼータ文庫
血みどろどろな外見とは裏腹に、本作は未来は自分で選択するものなのか、それとも必然なのかという哲学的問いを発している。
それに偶然という要素がからんでくるのだが、小説で起きる出来事は全て作者による選択が小説上の必然であり、偶然はないのだ、ということに気づかされた。

削除ボーイズ0326 方波見大志 ポプラ社
時をかける少女』と受ける印象が違うのは何故なのかと考えるに、やはり作品のカラーを決めているのは設定よりも視点人物の性格なのだなあと思った。
ミステリーとしてもなかなかなのだが、日常の部分にこそ作者の持ち味があるのではと感じた。

人類は衰退しました 田中 ロミオ ガガガ文庫
食卓にビールを』風味の『導きの星』みたいなかなり変わった小説。
うごうごしゃべる妖精さん達がかわいくてまったりとしてくるが、いかんいかん、これを読んでまったりしていると衰退してしまう!