東雲製作所

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テーパリング・利上げ局面で強い資産は何か

FRBが年内にテーパリングを開始するという観測で市場が動揺している。先週のS&P500は0.59%下落。あおりを食らった日経平均は3.44%も下落した。

コロナで悪化した経済を立て直すため、米国のFRBを始めとした世界の中央銀行は、金利の引き下げや国債の購入といった金融緩和によって市場にじゃぶじゃぶお金を供給してきた。
これによってワクチン接種で先行する欧米を中心に景気は急速に回復したが、住宅価格の高騰などインフレが発生。金融緩和の弊害が目立ってきた。
冷え切った風呂を適温にするためガンガン薪をくべていたら熱くなりすぎたようなものだ。

今後、FRBはテーパリング(国債・住宅社債の買い入れ量の縮小)→利上げの順で金融引き締め政策を行うと予想されている。
風呂の例で言えば、テーパリングは薪の量を減らすこと。利上げは湯もみをして冷ますような政策だ。

株式相場はFRBの支援でコロナショックから急ピッチで回復。S&P500はコロナショックの底から2倍に上昇した。
市場は8月27日のジャクソンホール会合でFRBのパウエル議長からテーパリング開始について何らかの発表があるのではないかと警戒している。

FRBの支援が弱まると、株が下落すると予想されている。株を売却し、現金、債券、貴金属などの安全資産に移した方が良いのだろうか。

そこで、FRBが前回テーパリング、利上げを行った2013~2018年の各種資産の値動きを調べてみた。
バーナンキFRB議長がテーパリングを示唆した2013年5月22日を100として値動きを比較した。
FRBは2014年1月から10月までテーパリングを、2015年12月~2018年12月に利上げを実施した。

 

*主要4指数
ダウ平均、S&P500、ナスダック100、ラッセル2000の値動きを示す。

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DIA:ダウ平均、VOO:S&P500、QQQ:ナスダック100、IWM:ラッセル2000

テーパリング発表後数カ月は小型株のラッセル2000が強かったが、テーパリング開始以降はハイテク株中心のナスダック100が圧倒的に強かった。

 

*セクター別
米国株のセクター別の値動きを示す。

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VAW:素材、VCR:一般消費財・サービス、VDC:生活必需品、VDE:エネルギー、VFH:金融、VGT:情報技術、VHT:ヘルスケア、VIS:資本財・サービス、VOX:電気通信、VPU:公益、IYR:不動産

利上げ開始以降情報技術が強く他を圧倒している。利上げはバリュエーションが高いハイテク株に不利と言われているが、成長力の強さが上回っていたということだろう。
また、テーパリング期間はヘルスケアが好調だった。
全期間のパフォーマンスは情報技術、ヘルスケア、一般消費財の順だった。テーパリング~利上げ期も長期的に強いセクターが強かった。

弱い方に目を向けると、テーパリング時は不動産が弱い。住宅価格値上がりの恩恵がなくなるからだろう。
テーパリング終了以降はエネルギーが弱かった。これは世界的な脱炭素の動きに拠る所も大きい。

テーパリング、利上げと聞くと公益などのディフェンシブセクターに逃げたくなるが、金融引き締めをするということは、引き締めが必要なほど景気が良いということだ。前回の引き締め局面では、普通に情報技術など強いセクターの株式を持っていた方がパフォーマンスが良かった。


*地域別
次に、世界の地域別の値動きを示す。

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VT:全世界、VTI:米国、VGK:欧州、EWJ:日本、FXI:中国、VWO:新興国

米国は全期間を通じて強い
欧州はテーパリング初期までは強いがその後失速している。
中国は独自に時々急騰・急落しており、値動きが荒い。
日本はテーパリング期に弱く、新興国はずっと弱い。
金融引き締めは市場から資金を引き揚げるので米国のように安全性が高い市場ほど強く、新興国のようにリスキーな市場ほど弱い傾向がある。


米国債
米国債券の値動きを示す。

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TLT:20年以上長期米国債、IEF:7-10年米国債、SHY:1-3年短期米国債、JNK:米ジャンク債、BND:高格付け債

長期米国債はテーパリング開始までは大きく下落するが、実際にテーパリングが開始されてから利上げ初期までのパフォーマンスは良好だった。金利が上がると債券は下落するので意外な結果だが、事前に利上げを過剰に織り込んだ結果だろう。
ジャンク債と呼ばれる信用度の低い社債はテーパリング開始前からテーパリング初期にかけてのパフォーマンスが良かったが、利上げ開始前後に大きく下落するなど値動きが荒い。
短期米国債、次いで高格付け債は下落耐性が高かった。一時的でも下落が嫌なのであれば、ここに逃がすのは一法だ。


コモディティ
コモディティ(商品)の値動きを示す。

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GLD:金、SLV:銀、PPLT:プラチナ、CPER:銅、USO:原油

金、銀、プラチナ、銅はテーパリング、利上げの間ずっと軟調だった。特にプラチナのパフォーマンスが悪い。
原油はテーパリング開始後に上昇したが、テーパリング終了前から大きく下落し、その後は低迷している。
コモディティは株や債券のように金利が発生しないので、金利が上がると相対的に魅力が低下する。ゼロ金利なら貴金属を持っていても良いが、国債利回りが3%なのに利回りゼロの貴金属を持っているのは馬鹿らしいということだ。

貴金属は安全資産と言われているが、金融引き締め局面ではあまり持たない方が良さそうだ。


*まとめ
前回のテーパリング~利上げ期は単に米国株、特にVGT、QQQなど長期的に強い株をホールドするのが最もパフォーマンスが良かった。

基本的に株価の大暴落は2018年10~12月のような、利上げの最終盤に起こることが多い。
景気が鈍化しているのにFRBが利上げすると、二重に景気が冷えてしまい、株価が大暴落する。
今は景気拡大の初期であり、FRBも薪の量を減らそうか議論している段階なので、お風呂が急に冷えて大暴落が起きることは考えにくい。

ただし、今回は米国株が非常に割高になっている。
S&P500の予想PERは21.97でITバブル以来の高水準にある。2014年はPER15前後だった。
前回は金融引き締め序盤~中盤に大暴落は起きなかったが、今回はバリュエーション調整の暴落が起きるかもしれない点には注意が必要だ。

 

天才とは量をこなせること――売れる作家の全技術感想

『小説講座 売れる作家の全技術 デビューだけで満足してはいけない』(角川書店は『新宿鮫』などで知られる大沢在昌氏による小説の書き方本だ。天才が書いた本なので天才にしか役に立たない。

いや、役に立たないは言い過ぎで、凡才にも部分的には役に立つ。キャラクター造形が卓越した作家なだけあって、キャラクターに関するアドバイスにはなるほどと唸るものが多い。
・「善人が実は悪人」というのは物語を安っぽくしてしまう。「悪人が実は善人」というほうが物語に深みを与えるし、読者にも濃い印象を残ることができます。
・意外性をうまく使えば、スパイスのようにキャラクターを際立たせるという効果が期待できます。
・人物ごとにしゃべりそうなセリフをどんどん書き出していくと、やがて「この場面で、この人だったらこれしか言わない」という決定的なセリフが必ず出てきます。
・主人公や悪役やヒロインが弱いキャラクターの小説はダメです。メインの三人プラス二人ぐらいは、考えぬいた強いキャラクターを作ってください。

本書で特に感心したのは「答えを出さないで作った設問は、自分で考えもしなかったような答えが出てくるため、読者を驚かせる力を持つ。」という指摘だ。だが、答えをひねり出す方法は、「自分を追い詰めれば、アイデアは出てくるものです。もし出てこなかったら? そのときは小説を書く才能が自分にはないと思って諦めるしかありません。」としか書いてない。
大沢氏は根本の部分で、面白い物語を作る方法は教えられないという立場なのだ。

私はほとんどプロットを考えず、登場人物のキャラクターと大まかな通過点を四つくらい決めたら、書き始めてしまいます。登場人物のキャラクターさえきちっと固まっていれば、通過点と通過点の間の物語は彼らが勝手に動いて膨らましてくれるし、物語を押し進めてくれるからです。
そんなことができるような天才なら、本書など読まずとも作家になれるだろう。

本書を読んで、長嶋茂雄氏が松井秀喜氏や掛布雅之氏のスイング音を電話で聞いて「よし! いまの音だ!」と言って指導したというエピソードを想起した。松井氏や掛布氏が天才だから伝わったが、並の選手ではダメだろう。
天才は凡人が理論に基づいて行うことを感覚的に行う。天才のアドバイスは天才にしか伝わらないのだ。

大沢氏同様、プロットを組まずに書く作家に宮部みゆき氏や新井素子氏がいる。
興味深いのはプロットを組まずに書く天才型の作家は大量に読んでいるということだ。宮部氏や新井氏の乱読は有名だが、大沢氏も作家になるまで毎年五〇〇から一〇〇〇冊読んだと語っている。
大量に読むことで面白い小説のパターンが自家薬籠中の物になるので、プロットを組まなくてもその場その場で面白い展開を生み出せるようになるのではないか。
大塚英志氏が作家には母語として物語を操るタイプと外国語として物語の技術を習得したタイプがいると指摘されていたが、大量に読むことで母語のように書くことができるようになるのだろう。

私は今まで秀才は天才の下位互換だと思っていたが、アプローチの仕方が違うだけなのではないかと考えを改めた。
天才は量をこなすことが苦にならないので、量をこなして力技でねじ伏せる。
秀才はもっと楽をしたいので、分析をしてショートカットする方法を考える。
どちらが良いというわけではなく、その人に合った方法を選べば良いのではないだろうか。

ラーメンの残り汁カルボナーラが激ウマ

以前、ラーメンの残り汁で白菜餃子鍋を作ると美味いという記事を書いた。

shinonomen.hatenablog.com


その後、さらに美味い料理を発見した。それがラーメンの残り汁カルボナーラだ。
簡単に作れるのでレシピを公開する。

1)小鍋でラーメンの残り汁を煮立て、半分に割ったスパゲッティとちぎったキャベツ、お好みで肉団子を投入。スパゲッティをほぐしながら茹でる。
2)茹で上がったら、火を止めてレトルトのカルボナーラソースを入れる。完成!

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わずか2ステップで完成した。普通にスパゲッティを茹でると鍋、ざる、皿の三つを洗わねばならないが、この方法だと小鍋しか洗わなくて良いので、ズボラ人間にはうってつけだ。
昼にラーメンを小鍋のまま食べ、夜にそれを煮立ててカルボナーラを作るとさらに簡単だ。

ラーメンは醤油でも味噌でも良い。醤油や味噌の植物性の旨み成分と、カルボナーラの動物性旨み成分が合わさって芳醇なハーモニーを奏でている。
豚骨ラーメンの残り汁でも作ってみたがいまいちだった。豚と乳製品では旨み成分が似通っているため、相乗効果が発揮できないようだ。

スパゲッティを二つに割るとイタリア人が激怒するらしい。

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スパゲッティの食感にこだわっている人は大きな鍋でたっぷりのお湯で茹でた方が美味しいのだろう。私には良く分からないが。

暴落した中国ハイテク株は割安か

中国株が暴落している。
中国当局は7月にハイテク企業や教育企業などに対する規制を相次いで発表。
香港ハンセン指数は7月に8.3%下落。特にハイテク株の下げが激しく、KWEB(CSIチャイナインターネットETF)は月初から26.1%、2月の最高値からは一時54%も下落した。

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暴落した中国ハイテク株は割安なのだろうか。

著名投資家の高橋ダン氏は7月27日に「「この」銘柄が大暴落、今はバーゲンセールなのか?」という動画を公開。テクニカル指標RSIが28.26と上場来二番目の低さであることから、テンセント株は長期的に割安だと指摘。動画公開の2日後にテンセント株は10%以上急反発した。

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8月2日現在RSIは34.71まで戻っており、テクニカル的に異常な割安ではない。

ファンダメンタル的にはどうなのだろうか。
中国ハイテク大手のテンセント、アリババのファンダメンタル指標をGAFAMと比較した表を示す。

銘柄名 Ticker PER 益利回り PSR 1年リターン ROE EPS成長率 5年間益利回り 10年間益利回り
テンセント 700 21.15 4.73 7.42 -10.05 18.4 23.41 37.62 145.34
アリババ BABA 31.25 3.20 4.76 -22.24 15.1 16.87 22.39 71.19
アップル AAPL 28.64 3.49 7.07 38.2 131.8 30.91 32.14 155.70
マイクロソフト MSFT 36.34 2.75 12.79 40.32 43.2 26.99 23.48 101.00
アマゾン AMZN 58 1.72 3.78 5.15 25.9 39.42 18.67 116.98
アルファベット GOOGL 35.05 2.85 8.24 81.09 24.7 43.33 33.25 234.40
フェイスブック FB 26.39 3.79 9.67 40.46 24.9 19.33 27.83 95.18
GAFAM平均   36.884 2.92 8.31 41.04 50.1 32.00 27.07 140.65


PER~1年リターンはBloombergの7月30日の値、ROEとEPS成長率(過去2年の年次成長率)はSBI証券のレポートによる。

株の割安さを示すPERを見ると、テンセントが最も割安、アリババもやや割安だ。
しかし、株の成長性を示すROEやEPS成長率ではGAFAMに見劣りしているため、必ずしも割安とは言えない。

株の価値は理論上、将来得られる1株当たり利益の総和と等しくなる。
現在のEPS成長率が維持されると仮定して、今後5年間の益利回りの和を求めると、テンセントが最大になった。テンセントが当局の規制に負けず、成長を維持できるなら、GAFAMより割安だと言える。
一方アリババはGAFAM平均を下回っており、過去一年で22%も下落したにも関わらず、ファンダメンタル的には割安ではない。

テンセントのEPS成長率を下げてみた所、7%まで下げた所で、5年間の益利回りの和がGAFAM平均と概ね一致した。
市場は中国当局の規制によってテンセントの成長率が1/3以下に低下することを織り込んでおり、それ以上の成長率を維持できれば割安だと言えそうだ。

ただし、10年間投資する場合、EPS成長率がより強く効いてくるため、テンセントとGAFAMの益利回りの和はほとんど等しくなる。
10年以上の長期投資をするのであれば、現在のテンセントの株価には中国当局の規制による成長率低下リスクが十分織り込まれておらず、必ずしも割安ではない。

結論:5年程度投資するのであれば、テンセントは利益成長率が7%以下に落ち込まない限りGAFAMより割安。ただし、10年以上の長期投資をするのであれば、必ずしも割安ではない。

盤上の向日葵感想――100日間のどこかで死ぬワニの周囲の誰か

(本稿は『盤上の向日葵』の抽象的なネタバレを含みます。)
『盤上の向日葵』(柚月裕子著、中央公論新社)は将棋を題材にしたミステリーだ。
563ページもある長編だが、この先どうなるんだという興味でぐいぐい読まされ、特に後半は一気読みした。


『100日後に死ぬワニ』という漫画がある。主人公のワニが100日後に死ぬということを提示して残り日数をカウントダウンしたことで、何気ない日常を描きながら徐々に緊張感を高めることに成功して話題になった。

だが、緊張感を高めるという点では、この手法には改善の余地がある。
『100日後に死ぬワニ』では、読者にワニがいつ死ぬか分かってしまう。『100日間のどこかで死ぬワニ』にすれば、さらに緊張感が高まる。
さらに『100日間のどこかで死ぬワニの周囲の誰か』にしたらどうか。誰がいつ死ぬかという二つの謎があるので、物語はさらにスリリングになる。それが、『盤上の向日葵』だ。


本書の白眉は第一章で白骨化した死体が六百万円の駒と一緒に発見されるという構成だ。現代の刑事による捜査パートと、天才棋士上条桂介の過去パートが交互に語られ、徐々に事件の全貌が明らかになっていくのだが、最初に身元不明の死体が発見されているので、過去パートでは常に、今にも誰かが死ぬのではないか、という緊迫感が漂っている。
トランプを一枚ずつめくっていくような作者の情報の出し方が巧みで、事実が明らかになるたび新たな謎を提示して読者の興味を切らさない。

また、上条桂介の子供時代がけなげなのもポイントが高い。良く知らないキャラクターに関する殺人事件が起こっても、読者は興味をそそられない。子どもの頃から知っており親愛の情を抱いているキャラクターが殺人事件に関わっているかもしれないとなると、読者の興味は格段に高くなる。


唯一残念なのが、将棋バトル要素が淡泊なことだ。『りゅうおうのおしごと!』のような将棋小説に比べると対局描写が薄い。せっかく羽生九段をモデルにしたと思しき棋士とタイトル戦を戦っているのだから、二転三転の大熱戦で盛り上げて欲しかったし、上条にも岩にかじりついてでも将棋を指し続けるぞという執念を見せて欲しかった。

あまり将棋描写を厚くすると、謎解きとのバランスが悪くなってしまう。
将棋を題材にしたミステリーであって将棋小説ではないということだろう

半額神、客を走らす

晩御飯はスーパーBig-Aの半額弁当を食べることが多かった。ところが、Big-Aが戦略を転換し、以前なら半額にしていた時間帯になっても三割引にしかしなくなってしまった。私には弁当は半額でしか買わないというポリシーがあるため、なかなか買うことができない。
代わりに愛用しているのが駅前のスーパーだ。以前外法の者と戦った所である。

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こちらは毎晩八時に半額にするので、高確率で半額弁当を入手することができる。
先日、そのスーパーで舌を巻く出来事があったので、お伝えしたい。

七時五十分に弁当売り場を訪れた私は厳しい戦いを覚悟した。
その日は弁当ポイント十倍デーの水曜日。惣菜は沢山残っていたが、弁当の残りが少なかったのだ。
弁当らしい弁当はたれカツ丼二つとレバニラ弁当一つのみ、他には焼きそば二つとビッグハンバーガーが十個程残っていた。争奪戦に備えて気を引き締める。

八時前に半額シールを貼り付ける店員、半額弁当業界用語で言う所の半額神が売り場に現れた。ベテランの貫禄を感じるその女性半額神は、売り場をざっと見渡して残数を確認した後、惣菜に半額シールを貼り始めた。私は二つしかないタレカツ丼の前の好位置を確保。半額シールが貼られたら即座に確保する構えだ。
半額神が惣菜に半額シールを貼り終える。いよいよ弁当の番だと意気込んだ私は愕然とした。何と半額神は弁当には半額シールを貼らずにバックヤードに戻ってしまったのだ!
半額弁当を狙っていた客達に動揺が走る。幾人かの客が半額を諦め、三割引きのタレカツ丼や焼きそば、ビッグハンバーガーを手に取る。私は戒律に従ってそれを呆然と見送った。

やがて、半額神は売り場に戻ってくると、残った弁当や総菜の配置を整え始めた。八時を過ぎても半額シールを貼る様子はない。私は諦めて入口脇まで戻って、カゴを返した。
だが、万が一ということもある。帰る前にもう一度弁当売り場を確認しておこう。弁当売り場に戻った私は信じられないものを見た。何と残った弁当すべてに半額シールが貼られていたのだ! 私は猛然と残り一つのタレカツ丼とビッグハンバーガーをつかむとレジに向かった。

それにしてもなんと見事なフェイントよ。私は唸った。あの半額神は弁当が残りわずかで焦っているという客の心理を読み切った上で、たった数分シールを貼るのを遅らせただけで、五個程の弁当を三割引きで売ることに成功した。諸葛亮もかくやという見事な采配だ。
私も半額でしか買わないという戒律がなければ、見事に騙されていた所だ。鮮やかな手腕にほとほと感じ入ったのだった。

 

QQQのRSIが70を超えたら下落を待った方が良い

つみたてNISAとiDecoで米国株インデックスファンドを積み立てている。
QQQ連動投信はつみたてNISAやiDecoで買えないので、QQQ連動ETF(2631)を手動で買っている。
せっかくなので下落時に買うことにしているのだが、QQQは6月3日に移動平均線付近まで下落して以降下落らしい下落がなく、全然買うことができない。

株式の割高さを示す指標にRSIがある。過去一定期間の上げ幅(前日比)の合計を、同じ期間の変動幅の合計で割った値で、買われすぎ、売られすぎを判断するのに用いる。
一般に、RSI30以下が売られすぎ、70以上が買われすぎだ。
QQQのRSIは7/7には77まで上昇。7/14時点で75.54だ。70以上が買われすぎなので、かなりの割高だ。
(その後QQQは7/15,16に続落し、RSIは60.40まで下落した。まだ移動平均線には到達していない。)
押し目待ちに押し目なし」という格言もある。割高なのは気にせずに、買ってしまった方が良いのだろうか。

そこで、過去にQQQのRSIが70以上に達した場合、その後どうなったかを調べてみた。
大きな下落が来て元値を下回ったら「下落待ち」の方が良かったし、元値を下回ることなく上昇が続いたなら「すぐ買う」方が良かったということになる。

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過去20回の結果は下記の通りだ。
(RSIが70以上に上がり、70以下に下落するまでを1回とカウントしている)

時期 下落後の位置 より良い戦略
2020.8 平均線の下 下落待ち
2020.7 平均線の上 下落待ち
2020.6 平均線付近 下落待ち
2020.2 バンドの下 下落待ち
2020.1 平均線付近 下落待ち
2019.12 平均線の上 すぐ買う
2019.11 平均線の下 下落待ち
2019.11 平均線付近 下落待ち
2019.4 バンドの下 下落待ち
2019.3 平均線付近 下落待ち
2018.8 平均線の下 下落待ち
2018.6 平均線付近 下落待ち
2018.6 平均線の上 すぐ買う
2018.1 バンドの下 下落待ち
2017.11 平均線の下 下落待ち
2017.11 平均線の上 下落待ち
2017.1 平均線の上 下落待ち
2017.6 平均線の下 下落待ち
2017.4 平均線付近 すぐ買う
2017.3 バンド下限 下落待ち

過去20回中17回は下落待ちの方が良かったという結果になった。RSIが70以上になったら、ほとんどの場合下落を待ってから買った方が良い。
また、20回中15回は移動平均線付近まで下落している。平均線より上までしか下落しなかったことも5回あるが、その場合も翌月には移動平均線付近まで下落している。
RSIが高い時は買わずに我慢をし、下落が始まったら移動平均線の少し上に指値を入れておく戦略が良さそうだ。

結論:QQQのRSIが70を超えたら、下落を待ってから買った方が良い可能性が高い。

 

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