東雲製作所

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株価の暴落を待つべきか

2020年3月の暴落でS&P500は2237.3999まで下落し、2016年12月6日以来の安値をつけた。
2016年12月7日以降に買った投資家は全て、暴落を待っていた方が安く買えたことになる。

一般に、米国株のような右肩上がりの資産では原理的にはすぐに一括投資、心理的には時間分散をして積立投資をするのが良いとされている。
だが、しばしばこのような暴落が起こるのであれば、暴落を待って投資した方が良いのではないか。
そこで、2000年1月~2019年12月の20年間のS&P500の終値を用いて、暴落待ち戦略について検証してみた。

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まず、その日がその日以降の最安値である確率を調べた所、わずか2.723%だった。ほとんどの場合、すぐ買うより下落を待って買った方が良いことになる。
ただし、どのぐらい下落したら買えば良いのかという問題がある。1セントでも良いから下落したら買うのだと、わずか1セントを得するために、するすると上昇してしまって買い逃すリスクを冒していることになり、割に合わない。

そこで次に、10%以上下落する確率を調べると、66.11%だった。買うと決めた日に10%下に指値を入れて待っていれば、2/3ぐらいの確率で買えるということだ。
20%以上下落する確率は49.79%だった。20%下落するのを待つ戦略も半分ぐらいの確率で報われる。

ただし、下落待ち戦略の成功率は時期によって大きく異なる。
20%下落待ち戦略の成功率は、2000-2009年が88.47%であるのに対し、2010-2019年は11.13%だ。
特に2009年2月10日から 2018年1月16日までは20%下落待ち戦略は一度も成功していない。
ざっくり言うと2000年代はボックス相場であり、下落待ち戦略が有効だった。一方、2010年代は上げ相場であり、下落を待つよりすぐ投資する戦略の方が有効だった。

現在はどちらの戦略が有効なのだろうか。
チャートを見ると2017年からボックス相場に入っているようにも見えるし、コロナショックをイレギュラーな事態として除外して考えれば、上げ相場が続いているようにも見える。

2000年代がボックス相場、2010年代が上げ相場になったのはPERの変化による。

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S&P500の実績PERは 2009年のリーマンショック後の異常値を除くと、2000年代は低下し、2010年代に上昇している。
細かく言うと、2002年3月に46.71のピークをつけて下落に転じ、2011年9月に13.5で底を打って上昇に転じ、2018年1月に24.97でピークをつけてから、一時的な下落を除けば高止まりしている。

S&P500は2011年9月から2018年1月にかけて1204.42から2695.81へ上昇している。
株価=PER(株価収益率)×EPS(1株当たり利益)なので、株価が上昇するにはPERかEPSが上がる必要がある。
当該期間に株価は2.24倍になっているが、そのうち1.85倍はPERの上昇がもたらしたもので、EPSは1.21倍になったにすぎない。
EPSの上昇より、PERの上昇の寄与の方がずっと大きい。企業利益が伸びたからというよりは、株が割高になったから値上がりしたのだ。

現在はFRBが限界まで金融緩和を進めた結果、PERはかなり高くなってしまっている。EPS成長率以上の速度で株価が上がることは期待できない。
2000年代初頭のようなバブルが発生して一時的に高騰する可能性はあるが、2010年代のような長期の上げ相場が続くことは考えにくい。

バブル発生の可能性があるので、すぐ売り抜けられる短期投資家は買うのも一法だ。
だが、PERは既に割高で、EPSもしばらくコロナ前の水準には戻りそうもない。経済が完全復活するまではボックス相場になる可能性の方が高いのではないだろうか。