東雲製作所

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1/4イールドスプレッドの提唱

PERかイールドスプレッドか、それが問題だ。

株の割安さを測る指標としてはPER(益利回りの逆数)とイールドスプレッド(S&P500益利回り-米10年国債利回り)がある。東雲製作所ではどちらの指標が有効なのかを何度か記事にしてきた。

shinonomen.hatenablog.com

PERは株に投資すると何年で元本を回収できるかを示す指標だ。一方、イールドスプレッドは、益利回りと国債の利回り差を示す。安全な国債利回りが低ければ、益利回りが低くても仕方なく株を買うだろうという考えを元にしている。

S&P500益利回り、米10年国債利回り、イールドスプレッドの2017年からの推移を示す。

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米国債利回りが低下してもイールドスプレッドは以前と同水準までは下がっていない。
米国債利回りが3%前後だった2018年にはイールドスプレッドは3%前後で推移しているが、米国債利回りが低下した2019年は3.5%前後になっている。
イールドスプレッドは株の割安さの指標として役に立たない。

イールドスプレッドは運用先がS&P500と10年米国債しかないことを想定している。だが、実際は米国債以外にもディフェンシブな高配当株やリートなど、様々な投資対象が存在する。米国債利回りが株の割安さにダイレクトに影響するという想定には無理がある。

ただし、米国債利回りが株の割安さに全く影響しないわけではない。S&P500の益利回りを見ると、若干右下がりの傾向がある。つまり、米国債利回りの低下が株の割安さに多少影響していることが示唆される。

2018年1月と2020年1月に株の割高さが原因で調整が入っている。両調整時の値が同じになるよう米10年国債利回りのウェイトを計算すると、下記のようになる。

5.058-1.877x=5.195-2.476x
0.559x=0.137
x=0.245

米国債利回りのウェイトは約0.25。つまり米国債利回りを1/4にして益利回りから引けば、適切な割安さの指標になるということだ。

S&P500益利回り-1/4×米10年国債利回りを「1/4イールドスプレッド」と命名する。

前掲のグラフに1/4イールドスプレッドを加えたグラフを示す。

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イールドスプレッドが右肩上がり、益利回りが若干右肩下がりになっているのに対し、1/4イールドスプレッドは概ね水平になっており、割安さの指標として適切であることが示唆される。

1/4イールドスプレッドの過去の中央値は5.1なので、5.1程度が適正値だ。
現在の1/4イールドスプレッドは4.659なので割高と言える。
4/17の米10年債利回りは0.642%なので、
5.1-1/4×0.642=4.940 すなわちPER20.24程度が適正値だ。

また、1/4イールドスプレッドが4.6を切ると調整リスクが高まる。
4.6-1/4×0.642=4.440 すなわちPER=22.52を超えると危険だということだ。

1/4イールドスプレッドには二つ問題がある。
第一に国債利回りのウェイト1/4は2つのデータのみから推計しているということだ。ゼロ金利付近でも効き方が同程度であるという保証はない。
第二の問題は私が勝手に言い出しただけなので市場関係者は誰も1/4イールドスプレッドを意識していないということだ。PERのように意識されている指標の方が値動きに影響を及ぼしやすい。


現在のS&P500の予想PER 20.75は1/4イールドスプレッド的にやや割高だ。ただし、今後本格化する決算発表で下方修正が相次ぐだろうことを見込むとかなり割高だ。
S&P500の実績PERは22.10であり、現在の予想PERは去年より増益を見込んでいる。常識的に考えて増益するなどありえないだろう。
今年の企業収益が去年と同程度という甘い見通しでもPER22.10なので、下方修正が相次げば危険ラインのPER=22.52を超えてもおかしくない。今後1年だけの利益を見れば米国株は既にかなり割高である。

長期的に利益が元に戻ることを考えれば割高ではないので、二番底への備えができている長期投資家は売る必要はない。
だが、現金比率が低くて急落が来ても身動きが取れない人は、少し売っておいても良いのではないだろうか。