東雲製作所

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安値で買って高値で売る方法

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S&P500は最高値から30%以上も下落した。現在は少し戻しているがまだまだ予断を許さない状況だ。
こんな時に思うのが、暴落前の高値で売って、暴落後に買い戻せば大儲けできたのにということだ。
もし全知全能の神であれば、2018年末の底値に全力で買って2020年2月の高値で全て売り払い、この度の暴落の底を見極めて全力で買えばボロ儲けができる。
だが我々は神ではない。今から過去のチャートを眺め、2020年2月上旬の段階で全部売った方が良かったと言うのは結果論にすぎない。
今後同じような暴落が来た時に上手く回避するためには、神のような売買を明文化された売買ルールに落とし込む必要がある。
安値で買って高値で売るには大きく分けて二つの方法がある。順張りと逆張りだ。


1)移動平均線を上抜いたら買い、下抜いたら売る。(順張り法)

移動平均線を上抜いたら買い、下抜いたら売る。」というのはチャート分析の基本的な売買法だ。
私はこの手法を安くなってから売り、高くなってから買う愚かな手法だと馬鹿にしていたのだが、このような大暴落を経験してみると、大怪我をしないという意味ではなかなか優秀な売買法ではないかと考えを改めた。

2016年1月からS&P500に対し、200日移動平均線を2%以上上抜いたら買い、下抜いたら売ると下記のようになる。
2016/03/30 2063.95$ 買い
2018/10/24 2656.10$ 売り
2019/03/13 2810.92$ 買い
2020/02/27 2978.76$ 売り
2020/03/04 3130.12$ 買い
2020/03/06 2972.37$ 売り
リターン 602.24$
この売買をするには2370.13$が必要なので、4年間の利回りは25.4%となる。
この手法では移動平均線を抜いてトレンドが反転したと思ったらだましだった場合、持ち続けた場合より資金を浪費することになる。
例えば、2020/03/04の買いは結果的に不要な買いであり、157.75$損する結果となった。
とは言え、4年間の利回りは25.4%は持ち続けた場合の惨状を考えずとも上々の結果と言えよう。
この手法は大暴落から確実に途中で逃げられるという点では優秀だが、最安値、最高値付近では売買できないという欠点がある。順張りらしくローリスクローリターンな手法と言えよう。
また、下げる時は値動きが急なので、移動平均線を下抜けるのを確認してから売っていては間に合わず、押し目の底で売ってしまう可能性もある。


2)長期移動平均線の下方乖離が大きくなったら買い、上方乖離が大きくなったら売る。(逆張り法)

株価は移動平均線から大きく離れると近づく方向に動きやすいという性質がある。
2016年1月からS&P500に対し、200日移動平均線からの下方乖離が-10%になったら買い、上方乖離が+10%になったら売ると下記のようになる。
2016/02/11 1829.08$ 買い
2018/01/05 2743.15$ 売り
2018/12/20 2467.42$ 買い
2020/01/13 3288.13$ 売り
リターン 1734.78$
4年間の利回りは驚異の94.8%だ。
この手法は乖離率を上手く設定すれば、最安値付近で買って最高値付近で売ることができる点が最大のメリットだ。この例のように上手く決まれば1)の手法の4倍近い利回りを得ることができる。
逆に言うと、乖離率の設定をミスると安い時に買えず高い時に売れなくなってしまう。乖離率10%と設定して乖離率+9%から暴落したら売り逃してしまうし、乖離率が20%を超えるような大暴落になった場合は早めに買いすぎてしまう。
(売りで終わらないとリターンが計算できないため書かなかったが、今回の暴落では2020/3/11に2741.38$で買ってしまうことになる。)
逆張りらしくハイリスクハイリターンな手法と言える。


3)現実的な方法

2)のような方法はスパッと決まれば良いが、目論見が外れた時に悲惨なことになるのでリスクが高い。例えば、乖離率+10%になった後、0%ぐらいで下げ止まり、十年間の安定成長に入ったら、十年分の上げを取り逃がすことになる。
S&P500の200日移動平均線乖離率は、過去-39.65~20.62の間で変動している。通常時は投資可能資金中、株などのリスク資産60%のポジションを取っておいて、下記のような感じで変動させるのが現実的な方法だろう。
乖離率+20%になったらリスク資産の割合を30%にする。
乖離率+15%になったらリスク資産の割合を40%にする。
乖離率+10%になったらリスク資産の割合を50%にする。
乖離率  0%になったらリスク資産の割合を60%にする。
乖離率-10%になったらリスク資産の割合を70%にする。
乖離率-20%になったらリスク資産の割合を80%にする。
乖離率-30%になったらリスク資産の割合を90%にする。
乖離率-40%になったらリスク資産の割合を100%にする。
 
乖離率が大きくなると乖離率が減る方向に動きやすいというのはあくまで確率であり、100%そちら側に動く訳ではない。
予想が外れても対応できるようにしておくことが肝要だ。