東雲製作所

東雲長閑(しののめのどか)のよろず評論サイトです。

落ちるS&P500はさっさと掴め

「落ちるナイフは掴むな」という相場格言がある。下落中の株は買わず、底を打ったのを確認してから買えという教えだ。
「下落している株を底値で拾おうというのは、落ちてくるナイフを素手でつかむようなものである。ナイフが地面に突きささり、しばらく揺れ動いた後、しっかり止まってからつかむのが、正しいやり方である。」ピーター・リンチ

この格言は個別株を買う場合は正しい。個別株は決算が期待を裏切った場合、どこまで下落するか分からないからだ。個別株のような値動きをする新興国株インデックスも同様である。
一方、この格言はS&P500やNASDAQ100のような米国株インデックスには当てはまらない。米国株インデックスに投資する場合、しっかり止まるのを待っていたら絶好の買い場を逃してしまう。


1)上げ相場では急落の翌日は半値以上戻している。

昨年1月以降の上げ相場で、S&P500が1.5%以上下落したのは11日あるが、翌日も下落したのは二日のみで、平均騰落率は1.25%だった。初日の平均下落率は-2.20%なので、平均56.8%。大幅下落の翌日は半値以上戻すことが期待できるということだ。
翌日は反発する可能性が高いということは、米国株の下落を確認してから投資信託を買っていては間に合わない。投資信託は通常翌日の終値で買い付けるからだ。
「SPDRS&P500(1557)のすすめ」という記事でも書いたが、米国株が大幅下落した翌日に、SPDRS&P500かMAXIS米国株式(S&P500)のような日本上場ETFを買うのが良いだろう。

shinonomen.hatenablog.com


S&P500が急反発しがちなのは、「買いたいけど高すぎて買いにくいなあ」と思っている私のような投資家が世界中に大勢いるからだ。
下落するとそういう投資家がチャンス到来とばかりに買い向かってくるので急反発するのだ。


2)下げ相場では底打ちを待つのも一法

S&P500が大幅下落したらすぐに買えと言うと、長期下げ相場の入口かもしれないじゃないか、という反論があるかも知れない。
例えば2018年12月4日に-3.24%下落したのを見て2700$で購入すると、その後S&P500は大きな反発がないまま続落し、12月24日には2351$まで下落した。12.9%の下落。100万円買っていたら13万円近く吹き飛ぶ計算になる。

続落して大きな含み損を抱えるのが嫌な人は、長期移動平均線を見るのが良い。
2018年12月4日時点で、50日線などの長期移動平均線は下落トレンドに入っていた。

株の売買タイミングの法則として、グランビルの法則がある。
グランビルの第2、第3法則は「長期移動平均線が上げている時に移動平均線付近まで下げたら押し目買いのチャンス」と言うものだ。
グランビルの法則に従って、下落を拾うのは長期移動平均線が上げている時のみとし、長期移動平均線が下げている時は買いを見送れば、続落に巻き込まれて大きな含み損を抱えるリスクは減少する。


3)下げ相場でも長期的には買っても問題ない

ただし、長期的に見れば底打ちを待たずに買っても問題ない。

f:id:shinonomen:20200214171131p:plain


2018年12月4日に2700で買うと、短期的には大きな含み損を抱えるはめになる。だが、S&P500は2019年2月10日現在で3352$なのだから、2700$で買うのは長期的には大成功である。
長期移動平均線が下げている時は買わないという方針だと、2019年12月24日2351$をつけたバーゲンセール状態の時にも全く買えないことになる。
長期移動平均線が上げトレンドに乗ってから押し目で買うという方針だと、ようやく買えるのは3月22日で2801$まで上がっている。
上げ相場に乗ってから2801$で買った方が精神衛生上は良いが、2700$で買い向かい、下落に合わせて買い増していった方が儲かるのは明らかだ。
長期移動平均線が下げている時は続落リスクが高いが、長期的には素晴らしい買い場である可能性も高い。
下げ相場では全く買わないのではなく、2018年末並みの下落が来ても対応できるよう、資金を小分けにして下落の度に買い向かう方が賢明ではないか。


4)インデックスファンドの下落で買い向かわないのはリスクを取らなすぎ

S&P500のような米国のインデックスファンドは個別株に比べ、低リスク低リターンな商品だ。インデックスファンドを買ってリスクを抑えているのに、さらに下落時に買わないというのはリスクを取らなすぎであるように感じる。
タイミング投資は安い時を選んで買うことで購入金額を抑制する投資スタイルだ。下げた時に買わないのであれば、タイミング投資をするのは止めて定期積み立て投資にした方が良い。

成長国のインデックスファンドは人の欲望がある限り長期的には上昇する。続落しても売らなければ、長期的には報われる可能性が高い。
下落中に買うのは嫌なものだが、株で利益が出るのはリスクプレミアム=嫌な思いをした見返りのお陰なので、買うのが嫌な時ほど儲かる。

「ナイフが床に落ち、混乱がおさまり、不透明感が消えるころには、超お買い得品はまったく残っていないということだ。」ハワード・マークス

S&P500に1.5%以上の大きな下落が来たら、相場が落ち着くのを待つよりも勇気を持って買い向かう方が良いのではないだろうか。