東雲製作所

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米国株はPER的には割高だが、イールドスプレッド的には上昇余地がある。

 米国株の高騰が止まらない。S&P500は連日史上最高値を更新し、1月17日には3329.62$に達した。

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 株価の割安性を示す予想PERは過去2年で最も高かった2018年1月5日の19.25を上回る19.45まで上昇した。
 私はPER19以上なんて高過ぎる、じきに下落するだろうと考え、少しずつ売っていたのだが、一向に下落しない。以前、「PERとイールドスプレッドのどちらを信じれば良いのか」という記事で「株の割高・割安の判断指標としてはイールドスプレッドよりPERの方が適切である。」という結論を出したのだが、イールドスプレッドが物を言う相場に変わってきているのかも知れない。

shinonomen.hatenablog.com

 著名ブロガーのチンギスハン氏が「米株は割高なのか?ハイテク好調!データで検証!」という記事を書かれている。

www.tingisuhan.com


 その中で氏はウォーレン・バフェット氏が2017年に言った「現在の低い金利水準では(米国株は)割高とは言えない。むしろ適正といえる」という言葉を引き、
リーマンショック以前は政策金利が5%超→PER15(益利回り6.6%)が適正だったが、長期金利1.9%ではもう少し高いPERが適正になる。
PER20(益利回り5%)は長期金利+3.1%なので上乗せ十分。
PER28(益利回り3.5%)でもおかしくはない。
と結論づけている。

 チンギスハン氏は上乗せ金利(=イールドスプレッド)が1.5%を切るとさすがに行き過ぎだが、どの程度が適正かは分からないと書かれていたので、2018年からのS&P500予想益利回り(PERの逆数)、米国10年国債利回り、イールドスプレッド(両者の差)をプロットしてみた。

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 どの値も金利なので値が小さいほど割高である。
 S&P500予想益利回りを見ると、現在は非常に割高だ。だが、米国10年国債利回りが大きく下がっているので、両者の差であるイールドスプレッド的には2018年よりだいぶ割安であることが分かる。

 2018年以降、イールドスプレッドが0.3以上上がった(=株価が急落した)ケースは5件ある。株価急落前の益利回りとイールドスプレッドを抜き出したのが下表だ。

日付 10年国債利回り S&P500予想益利回り イールドスプレッド 理由
2018/2/2 2.841 5.540 2.699 VIX指数の上昇
2018/10/5 3.233 5.562 2.329 逆イールド発生
2018/12/14 2.895 6.192 3.297 FRB利上げ
2019/7/26 2.074 5.510 3.436 対中関税第四弾発動を表明
2019/9/27 1.687 5.522 3.835 米景気減速懸念


 この内、2018/12/14はFRB金利引き上げ、2019/07/26は対中関税の引き上げ、2019/09/27は米国の景気減速懸念という明確な下落要因があり、イールドスプレッドの低下が原因ではないので参考にならない。
 一方、2018/2/2と2018/10/05は株価の高値警戒感が広がっていた所に、ちょっとしたきっかけで調整が入ったケースだ。2018年10月も9月に2.7を切ってから一ヶ月後に下落しているので、イールドスプレッドが2.7を切ると下落リスクが高いと言えそうだ。

 現在、米国10年国債利回りは約1.8なので、イールドスプレッド2.7だとS&P500予想益利回りは4.5、予想PERは22.22となる。S&P500に換算すると3803.81$となり14.24%の上昇だ。1株利益の改善が無くても、このぐらいまで上がる余地はある。
 ただし、これは波乱要因がなかった場合であり、市場がリスクオフになるような事態が起これば、イールドスプレッドがいくつだろうが株価は急落する。また、PER単独で見れば既に割高なので、ちょっとした理由で調整が入る可能性もある。

 米国株はPER的には割高だが、イールドスプレッド的には上昇余地がある。すぐさま急落が来ても、3800$ぐらいまでするする上がっても対応できるように、ほどほどのリスクを取っておくことが肝要だ。