東雲製作所

東雲長閑(しののめのどか)のよろず評論サイトです。

京都のラーメン屋は研究機関

秋に二泊三日で京都出張に行った。京都の食べ物と言えば一般に和菓子や京野菜といったイメージだが、実は独創的なラーメン屋がひしめくラーメン激戦区なのだ。
ハイペースで京都屈指の人気店ばかり食べ歩いてきたのでレビューを記す。


本家第一旭たかばし本店 ラーメン750円

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京都駅近くにある有名店。11時の時点で20人ぐらいが並んでいる。隣の新福菜館も十数人が並んでおり、二大老舗ラーメン行列の競演みたいになっていた。
45分ぐらい並んで入店。じきに注文した750円のラーメンと250円の餃子が運ばれてきた。

 

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ラーメンは豚骨醤油スープとのことだが、豚油が効いた醤油ラーメンという感じ。普通のチャーシュー麺よりもどっさり乗ったチャーシューがうれしい。
もう一つの特徴がどっさり乗ったネギで、脂と重くなりがちなところにさっぱりとした刺激を与えている。
しっかり美味しいが、ものすごく変わっていたり異常にこだわっていたりするわけではないので、45分も並んでまで食べるほどではない。行くなら早朝など空いている時間が良いだろう。


吟醸ラーメン久保田 吟醸つけ麺味噌 870円 

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五条烏丸の繁華街からは少し外れた場所にある店。20時に行くと、外国人中心に十数人が並んでいた。40分程待って入店。店内はカウンターのみ十席で、店員二人だけで切り盛りしている。

 

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吟醸つけ麺味噌のスープを口に運んだ時の感想は「何だとー!」というもの。横綱が後ろ回し飛び蹴りを放ってきたような衝撃で、今まで食べたラーメンの中で最も予想外の味だった。
ベースは甘い味噌ベースの魚介系濃厚スープなのだが、少量入れられたタバスコ?がとにかく効いていて、一気にピザみたいな味になっている。
発想としては辛子味噌ラーメンに近いのだが、辛子味噌ラーメンの辛子がどっさり入っているのに対し、こちらのタバスコは隠し味的に少量入っているだけでそれほど辛くないのに味としての主張は非常に強いという点が異なっている。
タバスコのせいで、めちゃくちゃこだわって取っただろう魚介出汁スープの印象が薄くなってしまっている。大胆というか贅沢というか。
今まで食べたことのないラーメンを食べてみたい人はぜひ行くべきだ。


あいつのラーメンかたぐるま こくとんしょうゆラーメン 750円

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有名店あっぱれ屋で修行した弟子が開いたという店。こちらも有名店だけに混んでいるかと思ったが、行列もなくすんなり入店できた。丹波口という近くに観光地もなくバスの便も悪いという立地のせいか。外国人観光客が一人もおらず、外国人向けのガイドに掲載されていないのだろう。
店内はカウンターのみ15席程で、三人の店員で切り盛りしていた。
スープを一人前ずつ攪拌機で泡立てていて、手間暇かけて作っているのが伝わってくる。

 

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注文したこくとんしょうゆラーメンは魚粉がたっぷり入った魚介系ラーメン。大きな二枚のチャーシュー、大きなメンマ三本、煮卵が配され見た目的にも美しい。
スープはびっくりするような味ではないが、塩分控えめの上品な味わいで毎週のように通いたくなる味。麺はツルツルしていてのど越しが良い。半生のチャーシューも美味い。細部までこだわって作られたしみじみと美味いラーメンだ。


麺処鶏谷 熟成鶏そば 800円 

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西院駅から1キロ程四条通を歩いた所にある店。九時前に行ったのだが、カウンター+テーブル一席はほぼ満席だった。こちらも日本人客のみ。スタッフは三人。

 

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あっさりの鶏そばと濃厚な熟成鶏そばがあり、せっかくなので熟成鶏そばを注文した。
こげ茶色のスープの上に半生と火が通ったチャーシュー二枚ずつが配され、蝶々のようだ。
とにかく驚くのがスープの濃厚さ。過去食べたラーメンの中で最も濃厚なのは間違いない。おそらく小麦でとろみをつけているわけでもないのに、カレー並みのとろみがあるというのは尋常ではない。魚の甘露煮の鶏バージョンを飲んでいるような感覚だ。
細めの麺に超濃厚なスープが絡みつき、濃厚なのにすいすいと箸が進む。スープだけ飲むと塩分が濃すぎるのが唯一の難点だ。


麺屋極鶏 鶏だく 750円

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京都屈指のラーメン激戦区一乗寺の中でも抜けた人気を誇る名店。16時頃行ったら行列はなかったが、10分ぐらい腹ごなしに歩きまわってから戻ってきたら10人ぐらい並んでいた。おそるべし人気店。
だが、ここも外国人客は全くいなかった。京都駅周辺の店にしかいかないとは、調べが浅いぞ外国人。
店内はカウンターとテーブル一つだが五人程の店員が働いており、一人が誘導をしてくれているので、スムーズに入店できた。

 

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店内にはおしゃれな洋楽がかかっている。名物の鶏だくを注文。丼が置かれた瞬間、ネギの上に乗った刻み柑橘類の香りがして食欲を掻き立てられた。
最大の特徴はムースのようなスープだろう。いくら濃厚なスープでもドロドロした液体だが、鶏だくでは完全に個体。くるみ豆腐を柔らかくしたような食感だ。そこまで濃厚だとさぞかし重いのかと思いきや、油っぽくなくてふわふわしているので、食感はむしろ軽い。ムース状のスープが固ゆでの麺に絡みつく。ラーメンと皿うどんの中間のような感覚だ。久保田も唯一無二だったが、あれはまだ変わった味のラーメンだった。だが、これはもはやラーメンではなく、鶏だくという新しい食べ物だ。普通のラーメン屋が町医者だとすれば、麺屋極鶏はiPS研究所だ。それぐらいの格の違いを感じて圧倒された。
唯一難点を上げるなら塩気が強すぎるかなとは思うが、新しい料理を創設し、どうすればスープがこんなことになるのか見当もつかないという時点で平伏するしかない。一乗寺は京都の北の外れだが、市バスを使えば230円で行ける。ラーメン好きなら京都を訪れた際はラーメン界の極北を一度味わっておくべきだ。


おまけ
めんや鶏志 濃厚鶏白湯そば 780円

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麺屋極鶏と間違って入った店。私の前にいた客もここを出た後麺屋極鶏に入っていったので、間違えたものと思われる。一乗寺の駅から歩いて行くとこちらが先に目に入るので紛らわしいが、店名は鶏しか合っていないのだから、店を責めるわけにもいかない。

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女性店主が一人でやっている店で、鶏の煮凝りを飲んでいるような濃厚なスープ。生玉ねぎがアクセントになっており、細麺と相まって濃厚な割にするする食べられる。
なかなか美味しいが、唯一無二のラーメンという訳ではないので、上記の五店と並べるのはまだ早い感じがする。


今回、短期間に有名店を巡るため、初めてラーメン屋のはしごをしたのだが、血糖値が上がった状態で食べると美味しさがかなり減じてしまうことが分かった。
美味しいものを立て続けに食べると有難味が薄れる。このレベルの超絶美味しいものは月に一回ぐらい食べれば十分だ。