東雲製作所

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会社四季報の達人が教える10倍株・100倍株の探し方感想――急成長株はリスクが高い

 会社四季報の達人が教える10倍株・100倍株の探し方』(渡部誠二著、東洋経済新報社四季報読破を20年以上続けてきた著者が会社四季報の活用術や株価が10倍、100倍になるような急成長株の見つけ方を説いた本だ。
 「たとえ割安でも、「カタリスト(上がるきっかけ)」がなければ、株価も上昇しない」、「割安株はコメント欄に何か変化が感じられたときが狙い目」など、目を開かれる記述が多かった。一方で、本書が主に推奨している急成長株投資はリスクが高くお勧めできない。

 本書では10倍株の条件として下記の4つを上げている。
1.増収率が高い=4年で売上高2倍(20%以上)
2.売上高営業利益率が10%以上
3.オーナー企業
4.上場5年以内

 2018年4月3日に4つのポイントでスクリーニングした結果の表が載っていたので、読んですぐ現在の株価を調べてみたのだが、惨憺たる結果だった。

銘柄 予想PER 2018.4/3株価 2019.10/18株価 騰落率
エボラブルアジア 29.3 2196 1925 -12.34
シェアリングテクノロジー 34.9 2625 412 -84.3
ウェルビー 40.1 1223 1562 27.72
TOKYO BASE 42.4 1442 706 -51.04
インソース 63.1 5180 2620 -49.42
すららネット 72.7 7000 2925 -58.21
鎌倉新書 75.1 3745 1480 -60.48
オプティム 80.7 2461 2705 9.91
合計   25872 14335 -44.59
TOPIX   1703 1621 -4.82

 

 2018年4月に本書の投資法を実践し、条件に合致する8銘柄を100株ずつ購入していたら、44.59%のマイナスになる。半分近くが吹き飛んだということだ。
 最もリターンが良かったウェルビーが+27.72%であるのに対し、最も悪かったシェアリングテクノロジーは-84.3%と1/6以下になっている。
 同期間のTOPIXが-4.82%なので、マイナス幅の大きさが際立っている。


 なぜ本書の戦略は上手く行かなかったのだろうか。3つの理由が考えられる。
1)時期が悪い
 2018年4月から2019年10月の間に、日本株は大きく下落しており、小型急成長株にとって厳しい環境だった。急成長株は上昇局面では大きく上げる反面、下落局面ではリターン・リバーサルで他の株より大きく下落する。日本株全体が好調だった2016~2017年なら本書の戦略は上手くいっていた可能性が高い。


2)4条件の中に割安性を示す条件がない
 成長性が高い株を買えば儲かるのではなく、将来の成長性を考えれば割安な株を買ってこそ儲かる。
 著者はソニーの1955-1972年の平均実績PERが92倍、実績PBRが16倍であることをあげ、PERやPBRの高さは気にしなくて良いと書かれていたが、それはソニーがPER92でも割安な程成長性が高かったからだ。新興企業が将来ソニーほど成長する可能性は極めて低いので、大抵の場合PERが高い株は割高である。
 PERが割高かどうか判断するには、他の大企業と比べてみれば良い。例えば、時価総額世界一で盤石の収益基盤を誇るマイクロソフトの予想PERは29程度である。PER30以上の企業はマイクロソフトよりすごくない限り割高だということだ。


3)増収率20%以上だと急成長すぎて永続性がない
 ウォーレン・バフェット氏は特権的強みを持った企業の財務的な特徴として下記の4点を上げている。
・過去10年安定した成長を見せ、その間利益は2倍増程度になっている。(年率7%)
ROEは15%以上
売上高営業利益率は10%以上
・有利子負債は5年分の純利益で返済できる。
 売上高営業利益率は本書と同じだが、増益率は20%→7%と大幅に低い分、10年以上と期間が長いことが分かる。
 増収率20%以上というのは会社の成長率としてはあまりに高すぎて永続性がない。暴落している株が多いのは、1年半高い増収率を維持できなかったからではないだろうか。


 著者は10年で株式時価総額が10倍以上になった銘柄から4条件を抽出した。だが、これには落とし穴がある。10倍株になる可能性もあるが、暴落する可能性も高いのだ。
 PER30を越えるような急成長株はちょっと決算が悪いと簡単に半値になってしまう。巧みに売り抜けられる人なら良いが、普通のアマチュア投資家は日中仕事をしており、暴落を察知して高値で売るのは難しい。

 本書の投資法は上げ相場で専業投資家が大きく儲けるには良い方法かも知れないがリスクも高い。普通のアマチュア投資家はバフェット氏が言うように成長率はさほど高くないが収益基盤が安定しており、PERがほどほどの銘柄を狙った方が良いのではないだろうか。