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株高円高到来。外国株売買に為替を考慮すべきか。

 急速な株高、円高が進んでいる。
 米国の代表的な株価指数、S&P500は終値で史上最高値を更新した。(6月25日現在は2917.4$)。6月初頭に2744.4$をつけてから一ヶ月未満で7%も急上昇した。

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 一方で為替は急速に円高に振れている。5月末には1ドル109.5円だったのが、現在は107.4円。一ヶ月で2%上がっている。
 円高になるとドル資産の価値が減る。米国株は上がっているものの、円ベースで見ると相当上げが打ち消されてしまっている。
 株高なので少し売っておきたい所だが、こんな円高な時に売りたくないという気持ちが相まって悩ましい。

 米国株等の外国株を売買する際に為替を考慮すべきだろうか。三つの考えがある。


 一つ目は為替はおろか株価も考慮せず、ひたすら機械的ドルコスト平均法で積み立てるという考え方だ。これは株価も為替も予測不能でありかつ、現在値が高いか安いかも判断不能であるという考えに基づいている。
 これは10年以上の長期に渡って投資するのであれば正しい。長期的に見れば米国株は右肩上がりに成長するからだ。
 ただし、現在は10年以上続く景気拡大期の終盤で、景気後退が迫っているという意見が多い。景気後退に突入したら、景気後退が終わるまでは含み損を抱えても定期的に買い続ける覚悟が必要だ。


 二つ目は為替は無視して株価と経済指標のみに基づいて売買すべきという考え方だ。これは株価はいずれ本質的価値になるというファンダメンタリストの立場だ。
 ファンダメンタリストは株の本質的価値と株価を比較し、本質的価値より安ければ買い、高ければ売るべきだと考えている。株の本質的価値と為替は関係ないので、為替のことは考慮しない。
 ファンダメンタリストは様々な指標を元に投資戦略を考えているが、簡便にはPERやイールドスプレッドを見れば良い。
 6月21日現在、S&P500の予想PERは17.85。過去1年間の予想PERと比較して割高だ。今は買うべきではない。

 ただし、イールドスプレッドで見るとやや状況が異なる。S&P500の益利回りは5.60%(1/17.85×100)。10年米国債利回りは大きく下げて2.06%なので、イールドスプレッドは3.54%になる。これは過去5年の平均的な値だ。
 過去二回(昨年1月と10月)の暴落を見ると、米国株はS&P500のイールドスプレッドが2.36%を下回ると下落している。現在はPER的にはかなり割高だが、10年米国債利回りが下がったためイールドスプレッドで見るとまだ上昇余地は残されている。


 三つ目は為替と株価の両方を考慮して売買すべきという考え方だ。株価や為替はランダムに動いていて予測不能だが、現在値が高いか安いかはある程度判断可能だろうという考えに基づいている。
 この考え方に立つ場合、最も簡単なのが、SPDRS&P500(円ベース)のチャートを見て、過去より高めだったら売り、安めだったら買うという戦略だ。
 SPDRS&P500ETF(1557)の過去1年間のチャートを示す。

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 昨年末の暴落を除けば、概ね29500~32500の範囲内で上下している。現在をボックス相場だと考えるなら、31000円より高ければ割高、安ければ割安と言えそうだ。現在値は31350円なので、やや割高と言えるだろう。
 ただし、この方法だと、株価が右肩上がりの時に全く買えなくなってしまう。PER×為替の時系列データを作って比較する方法の方がより適切だ。


 私自身は二つ目か三つ目の戦略を取って、割高な時は買わない方が良いと考えている。
 もちろん、米中合意が急転直下で成立する等の理由で株価が右肩上がりで上昇、為替も円安に振れ、今のうちに買っておけば良かったのに、となる可能性はある。
 だが、景気後退が始まると、割高な時に買ってしまった株は何年も含み損になってしまう。いくらいずれプラスになるのだから大丈夫だと分かっていても、何年も大きな含み損を抱えるのは心理的負荷が大きいからだ。

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