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金利2%!ドル建てMMFの定期買い付けは有効か

 日本円ベースで運用している投資家は適当な債権的運用先が無くて困っている。
 債権的運用先とは、低金利だが値動きが少なく、ポートフォリオに組み込むことで資産全体のリスクを軽減できる商品のことだ。
 元本保証の定期預金や日本国債金利が0.1%程度であり、タンス預金と大して変わらない。
 比較的有望なのがJリートだが、みんな債権的運用先を求めているので、ずっと高めになっている。

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 ドル建ての債権的商品にMMFがある。格付けの高い短期債券のみで構成された投資信託の一種で、安全第一で設計されているためよほどのことがない限り元本割れしない。株や通常の債券に比べると金利は低いが、それでも2%程度ある。さらに素晴らしいのが投資資金を一時的に置いておくための商品なので買い付け手数料がかからず、いつでも解約できるということだ。
 現在、米国10年国債金利は2.227%、ブラックロック・スーパー・マネー・マーケット・ファンドは2.028%なのでそれほど変わらない。それならば、買い付け手数料がかからず元本割れリスクが低いMMFで運用した方が良さそうだ。

投信・外貨建MMF|SBI証券

 ドル建てMMF最大の難点は為替の影響を受けることだ。せっかく2%の金利がついても、2%以上ドル安に振れたら、円ベースの価値はマイナスになってしまう。
 だが、株は買う時期を分散することでリスクを低減することができる。MMFも時間分散して定期買い付けをすることで、為替の影響を緩和できるのではないか。

 そこで過去一年間週に一回MMFを定期買い付けした場合の収支を計算してみた。
 2018年5月27日から2019年5月26日までの1年間、毎週1000円ずつドル転し、ブラックロックMMFに積み立てると、下記のようになる。
積み立て金額(円ベース)52,000円
積み立て金額(ドルベース)467.62$
金利(ドルベース) 4.77$
年利回り(ドルベース) 1.02%
年利回り(円ベース) -0.45%

 金利は2%程度あるものの、1年間に分散して買い付けると、平均保有期間は半年になってしまうため、利回りは1%程度に低下する。
 さらにひどいのは円ベースの利回りで、0.45%のマイナスとなった。過去1年間の平均より、現在の為替がドル安になっているためだ。

 今回の試算では手数料を考慮していないが、実際はドル転の際に1ドルにつき4銭の手数料がかかるし(SBI銀行を利用した場合)、為替も若干不利になる。
 過去1年間で週次為替レートは108.48円~113.78円に変動している。変動幅は4.89%もある。2%程度の金利では為替リスクに見合わない。

 さらに悪いことに、今後米国が利下げを行うと、為替は円高に振れ、ドル試算は目減りすると予想されている。円高になった機を捉えてドル転するのならともかく、MMFを定期買い付けするのは良くない。日本円で銀行に置いておいた方がましである。