東雲製作所

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個人が個別株を買うのは割に合わない

 株に投資する方法は二つある。投資信託と個別株だ。
 投資信託は多数の株を運営会社がセット販売しているもので、投資先が分散されているのでリスクが低い、少額から投資できるといったメリットがある。
 一方、個別株は信託報酬がかからない、株主優待が受けられる、といったメリットがある。
 私は個別株も買ってみたのだが、割に合わないと思うようになった。以下に理由を述べる。


1)オーバーウェイトすぎる
 効率的市場仮説によると、全世界の株式をまるごと買う世界市場ポートフォリオこそが最もリスクを下げることができる。
 世界市場ポートフォリオでは先進国80% 新興国11% 日本9%というウェイトになる。
 100万円を運用している投資家であれば、先進国投資信託80万円、新興国投資信託11万円、TOPIX投資信託9万円を買えば良い。

 ここで、高配当で個人投資家に人気がある日産自動車株を追加で購入するとする。
 3月22日時点で日産自動車は1株957円。株は100株単位で売買されているから、買うには95700円必要だ。
 購入後の日産株のウェイトは約8.73%になる。

 一方、TOPIX中、日産自動車のウェイトは0.49%なので、世界市場ポートフォリオ中のウェイトは9×0.49/100=0.0441%となる。

 つまり、日産自動車株を購入すると、自然なポートフォリオと比べ、日産株のウェイトが約200倍になってしまう。これはさすがに偏りすぎで、日産株暴落のリスクが高すぎる。日本株と日産株のウェイトがほぼ同じことを見ても、個別株のウェイトが大きすぎることが分かるだろう。
 日産自動車は1株価格がかなり安めの株だ。普通の株は100株で数十万円はするから、買うとより著しいオーバーウェイトになる。

 投資資金1億の投資家なら、日産株を100株保有していてもウェイトは0.0957%。世界市場ポートフォリオ中の日産株0.0399%と足して0.1356%となり、0.0441%と比べて3倍程度のオーバーウェイトになる。3倍程度なら、許容範囲内だろう。

 投資資金を1億も持っていない普通の投資家が、どうしても個別株を買いたいなら、単元未満株で1万円ずつ買うべきだ。(1株ずつ買うこともできるが、1万円未満だと手数料が割高すぎる。)
 その場合でも投資資金が1000万円ぐらいはないと個別株のウェイトが大きすぎる。資金が数百万円以下の投資家は、ハイリスク・ハイリターンを求めているのでない限り、個別株には手を出さない方が良いだろう。


2)時間分散しにくい
 投資のリスクを下げるには、銘柄を分散するだけでなく、買う時期を分散する時間分散をすることが重要である。
 投資信託なら100円から手数料無料で買えるのに対し、個別株は単元未満株であっても1万円以下では買いにくい。この差は時間分散のしやすさに跳ね返ってくる。

 投資資金1000万円中、日産株を1万円(0.1%)持っているリッチな投資家が、毎月10万円ずつ株を追加購入するとする。
 ウェイトをキープしながら買い増そうとすると、日産株は100ヶ月に一回、すなわち8年ちょっとに一回しか買い増せない。
 時間分散を考えるなら、毎月か、せめて年に一度ぐらいは買い増したいが、そうするとオーバーウェイト度合いが悪化してしまう。


3)個人がプロより的確な判断をするのは難しい
 投資信託を買うのは市場全体の成長に期待する行為だが、個別株を買うとプロと直接勝負することになる。

 私は、昨年、半導体製造装置株が異様に高ROE低PERになっていたので、単元未満でちょこちょこ買い付けたのだが、大幅に下落して損失を出してしまった。後で分かったのだが、米中貿易戦争の影響で、中国向けの半導体製造装置の出荷額が激減していた。プロは半導体製造装置株がリスキーだと分かった上で売り浴びせていたのだ。

 東証一部に上場しているようなメジャーな株は、プロが血眼になって吟味に吟味を重ねている。割安だと思っても、たいてい安いなりの理由があるのだ。


4)メンテナンスが大変
 投資信託は割高になったらある程度売るぐらいで、基本的にはバイ&ホールドで放っておけば良い。
 一方、個別株は買った後もメンテナンスが必要だ。
 決算の度に業績をチェックする必要があるし、株価が急変したらその度に判断を迫られる。
 割安な株を見つけるのが大変なだけでなく、買った後も大変なのだ。

 投資が趣味で、楽しみのために個別株を買うのであれば良いが、金を増やすのが目的だと労力が割に合わない。


5)日本株全体の見通しが暗い
 個別株を買おうと思ったら、基本的に情報が多くて買いやすい日本株から選ぶことになる。だが、日本株は将来の見通しが暗い。
 世界でいち早く景気後退入りしたと見られている上に、10月には消費増税が控えている。さらに、日銀はすでに目一杯緩和政策を採っているので、景気が悪化しても手のうちようがない。

 今、日本の個別株を買うのは、急速に地盤沈下している土地で屋上の海抜が高くなる建物を探すようなものだ。そんな難しいことをするよりは市場全体の成長が見込まれる米国株か全世界株に投資する方が楽なのではないだろうか。

 

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