東雲製作所

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前澤社長が金を浪費するのは素晴らしい

 ZOZOTOWNの前澤社長がツイッターで100人に100万円をあげて批判されている。主な批判は下品だ、ツイートを金で買っている、金による言論統制だ、そんな金があるのなら非正規雇用従業員の給料を上げるべきだ、といったものだ。
 このうち、非正規雇用従業員の給料を上げるべきという主張には同意するが、それは政府の仕事だろう。社長の善意に頼って給料を上げようとすると、悪どい社長ほど得をすることになってしまうからだ。

 前澤社長は以前から叩かれがちだ。剛力彩芽氏とロシアW杯を観戦しに行った時は、良くわからない理由で剛力氏が叩かれていた。
 この背景には日本人の清貧の思想がある。
 日本人は金を卑しいものだと考え、金を浪費する人より、慎ましやかな生活を送る人の方が好ましいと考える傾向がある。
 しかし金持ちが目刺しを食って木刀を振っているよりは、ツイッターで金をバラ巻いたり月旅行に行ったりした方が経済が活性化し、格差も縮小する。
 倹約家の金持ちより浪費家の金持ちの方が社会にとって有益なのは明らかだ。

 ほとんどの金持ちは倹約家である。
 ウォーレン・バフェット氏はビル・ゲイツ氏と二人で香港に遊びに行き、マクドナルドに入った。そこでバフェット氏は「ここは私のおごりだ」と言ってマクドナルドのクーポンを取り出したのだと言う。
 私もケチなのでこのエピソードは大好きなのだが、世界有数の金持ちがこんなに倹約していたのでは、格差が拡大する一方だ。

 ケチなのはバフェット氏だけではない。「となりの億万長者 成功を生む7つの法則」(トマス・J・スタンリー&ウィリアム・D・ダンコ 斎藤聖美訳 早川書房)は全米の億万長者について調査した本だ。
 これによると、億万長者の多くは高級外車に乗ったり高価な腕時計や宝石を身にまとったりせず、ケチケチ生活している。
 医者や弁護士といった高収入の職業は、信用のために身なりや交際等に金を使わねばならないので億万長者は少ない。むしろ、地味な仕事を営む自営業者が多いのだと言う。
 年収が高くても、年収分だけ使ってしまっては金持ちにはなれない。金持ちがケチというより、ケチな人が金持ちになるのだ。

 前澤社長は浪費家なのに金持ちという非常に珍しい存在だ。
 ただでさえ浪費家の金持ちは少ないのに、前澤氏がバッシングされたらどうなるか。前澤氏のように浪費してやろうかと思っていた金持ちは、ああ、浪費なんかしたらバッシングされてしまう。やはりケチケチと金を貯めこんでおくに限る、と考えを変え、金を使わなくなるだろう。その結果、格差はますます拡大し、経済は停滞、貧しい人はますます貧しくなるのである。

 格差を縮小したいのなら、清貧の思想を脱し、前澤社長のような行為を後押しすべきではないだろうか。

 

となりの億万長者 〔新版〕 ― 成功を生む7つの法則

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