東雲製作所

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圧倒的に賢いことを示せないのなら、アウトサイダーの意見も聞いてくれ

 JR東日本が山手線の新駅名を高輪ゲートウェイに決定した件はネット上を中心にフルボッコにあった。名前がダサいこと以上に反発を招いたのは、公募順位上位の高輪、芝浦、芝浜を抑えて、130位の高輪ゲートウェイが選ばれたことだ。

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 問題点は二つあって、一つは民意を無視したことで、投票した人に、我々の意見が無視された、という疎外感を味あわせたこと。もう一つは無視した人たちを納得させられるような説明を示せなかったことだ。

 民意が必ず正しいわけではない。特に専門的な分野では、少数の専門家の方がより適切な判断を下すこともある。だが、その場合、専門家はなぜ民意と違う決定をしたのか説明する必要がある。
 適切な説明がなされなければ、意見を表明していたアウトサイダーは、何を言っても無駄だと感じ、以降は意見を出すことを止めてしまう。
 例えば、今後、JR東日本が利用者から意見を募っても、「またどうせ無視されるんだろ」と思われ、意見を表明する人は減るだろう。口をつぐんだ人の中に、ものすごく良い意見があるかもしれないのに、それを得る機会を逸することになるのだ。

 ここまでのまとめ。インサイダーだけで民意を無視して決定し、納得のいくような説明をしないことの弊害は二つ。アウトサイダーに疎外感を与えることと、今後アウトサイダーから良い意見を得るチャンスを逸することだ。


 今の政府は少数のインサイダーだけで決定しようという姿勢が顕著だ。
 野党の意見によって法案を修正することは稀だし、国民から広く意見を吸い上げて、政策決定に活かそうという姿勢も見られない。
 納得のいくような説明をしないという姿勢も目立つ。野党や記者からの質問に対し、はぐらかしたり、真面目に答えようとしないことが多い。

 少数のインサイダーだけで決める政治とは賢人政治のことだ。賢人政治はインサイダーが民衆より圧倒的に賢い時は有効だ。
 だが、賢人政治には疎外感と良い意見を得る機会の喪失という二つのデメリットがあるのだから、ものすごく賢くなくては釣り合わない。
 全国津々浦々にはあらゆるジャンルの専門家がいるわけで、それらを全部合わせたよりも賢いというのは相当なことだ。少なくとも、アウトサイダーが「ぐぬう」と言って黙るくらい賢くないとダメだ。

 安倍政権が一定の支持を得てきたのは、野党よりは賢いのではないか、という期待を集めてきたからだろう。
 私も、安倍政権の閣僚はともかく、知恵袋となっている官邸官僚は霞ヶ関のキャリア官僚の中で競争を勝ち抜いてきたエリート中のエリートなので、結構賢いのではないかと思っていた。
 だが、最近は賢いことに疑念を抱かせるような政策が目立つ。

 特にひどいのが、消費増税に対する軽減策だ。
 政府は軽減税率に加え、5%と2%が混在するポイント還元制度を実施するつもりのようだ。
 制度を複雑にすればするほど導入コストがかさむのは子供でも分かる話で、とても賢い人が考えた政策とは思えない。
 小売店の人から意見を聞けば、こんな複雑な制度、やってられんわ! という反対論が噴出するはずなのに、なぜ意見を聞いてから決めようとしないのか。

 圧倒的に賢いことを示せないのなら、アウトサイダーの意見も聞いてくれ。