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日経平均はTOPIXより低PER高ROE

1.日経平均はいい加減な指標

 日経平均はいい加減な指標だ。株価を単純平均しているため、株価が高い値嵩株の影響を強く受ける。
 1株当たりの値段が高いか安いかは、企業価値と何の関係もない。上場時に1株当たりの価格を低くして株数を多くするか、高くして株数を少なくするかは単なる好みの問題だからだ。
 時価総額によって配分を決めているTOPIXの組み入れ上位10社は下記の通りだ。

1 トヨタ自動車 3.16%
2 三菱UFJFG 2.02%
3 ソニー 1.77%
4 ソフトバンクG 1.59%
5 NTT 1.37%
6 三井住友FG 1.32%
7 ホンダ 1.17%
8 キーエンス 1.16%
9 みずほFG 1.12%
10 KDDI 1.04%

日本を代表する大企業が並んでいる。

 一方、日経平均の組み入れ上位10社は下記のようになっている。
1 ファーストリテイリング 9.65%
2 ソフトバンクG 4.59%
3 ファナック 3.34%
4 KDDI 2.85%
5 東京エレクトロン 2.65%
6 ダイキン工業 2.22%
7 ユニー・ファミリーマート 2.22%
8 京セラ 2.07%
9 テルモ 2.06%
10 TDK 1.65%

ユニー・ファミリーマート時価総額72位、京セラは64位であり、何でこんなにウェイトが高いのか釈然としないが、1株当たりの値段が高いため上位に来ているのだ。

 また、日経平均255社は定期的に入れ替えがなされているが、選定理由に客観的な基準が存在せず、何故この企業が入り、この企業が外されたのか良く分からない。キーエンス時価総額6位の大企業で業績も好調だが、何故か日経平均には入っていない。

 ちなみに、ダウ平均も日経平均同様、株価の単純平均による指標だ。(というか日経平均がダウ平均の真似をして作られた。)日経平均は255銘柄なのに対し、ダウ平均はわずか30銘柄なので、さらに1株当たりの値動きに引っ張られやすい。

 ダウ平均にはアマゾンが入っておらず、今後も入る見込みはない。なぜかと言うと、ダウ平均の構成銘柄は一株当たり40$から340$ぐらいなのに対し、アマゾンは約1600$であり、もし組み入れるとアマゾンの影響が大きくなりすぎるため、入れられないのだ。

 そんないい加減な理由があるだろうか。四則演算しかできない小学生じゃないんだから、適当な補正をかけたらどうなのか。

 

2.日経平均TOPIXより低PER高ROE

 いい加減な日経平均だが、最近のパフォーマンスはTOPIXを大きく上回っている。日経平均=くたびれた大企業の集まりというイメージだったので、パフォーマンスが良いのが不思議だったのだが、ROEを計算してみて驚いた。(ROE=PBR/PER×100)
PER:株価収益率。純利益に対する株価の割安さを表す。低い程割安。
PBR:株価純資産倍率。純資産に対する株価の割安さを表す。低い程割安。
ROE自己資本利益率自己資本からどれくらい利益を上げているかを表す。高い程高収益。

11/16
日経平均
PER 12.21
PBR 1.13
ROE 9.25

TOPIX
PER 13.75
PBR 1.11
ROE 8.07

 つまり日経平均TOPIXより低PER高ROE、すなわち割安なのに収益率が高いのだ。そりゃあパフォーマンスも良くなるはずだわ。

 ちなみに、日本第三の指標にJPX日経400がある。
 組み入れ比率は下記の通りで、時価総額ウェイトであるためTOPIXと似通っている。
1 ソニー 1.69%
2 三菱UFJFG 1.68%
3 ソフトバンクG 1.63%
4 三井住友FG 1.49%
5 ホンダ 1.45%
6 キーエンス 1.41%
7 みずほFG 1.40%
8 NTT 1.40%
9 KDDI 1.31%
10 トヨタ自動車 1.31%

 JPX日経400の投資指標は下記の通りだ。
JPX日経400
PER 13.17
PBR 1.32
ROE 10.02

 PERによる割安度は日経平均TOPIXの中間で、ROEは一番高い。指標上はなかなか優秀である。
 JPX日経400は日経平均と違い、高ROEなどの客観的指標を用いて400企業を選定した指標で、投資家の期待を集めた。ところが、パフォーマンスはTOPIXより悪かった。
 TOPIX日経平均TOPIXとJPX日経400のパフォーマンス比較はナッツさんの記事が詳しい。

www.mixnats.com

www.mixnats.com


3.何故日経平均のパフォーマンスが良いのか

 何故、客観的指標によって優良企業を集めたJPX日経400のパフォーマンスが悪く、いい加減な日経平均のパフォーマンスが良いのだろうか。

 

 時価総額ウェイトが良くないという指摘がある。

www.y-strategies.com

 時価総額ウェイトだと株価が高くなった時に多く買うため、リターンが少なくなるという指摘で納得がいく。

 

 また、いい加減であること自体がパフォーマンスに寄与しているという指摘も読んだことがある。
 期待を集めている指標は、多くの人が買うため割高になり、パフォーマンスが悪化する。一方、日経平均はいかにもいい加減な指標のためあまり買う気になれず、割安なまま放置されていると言うのだ。

 

 いくつか理由はあるものの、最も本質的な理由は日経平均が割安だということだろう。
 低PER銘柄や、低PBR銘柄は高PER銘柄、高PBR銘柄よりリターンが高いという研究結果がある。
 株価指数を選ぶ時、分散性や選定方法の合理性を第一に考えがちだが、バリュエーション(割安さ)の方が重要なのではないだろうか。