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ひふみ投信が下落したのはトランプのせい

 ひふみ投信レオス・キャピタルワークスが運用するアクティブファンドで、長期に渡ってTOPIXを上回るリターンを出していることや、アクティブファンドの割には信託報酬が安いことから個人投資家に人気がある。
 楽天証券の7月の買付金額ランキングではひふみ投信の銀行・証券会社向け商品であるひふみプラスが1位になっている。
 そんなひふみ投信のリターンが悪化している。

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 図1に日経平均TOPIX、JPX日経中小型株指数、ひふみプラスを1月4日の終値を100として比較した年初来リターンを示す。
 ひふみプラスは7月末までは諸指数を上回る年初来リターンを叩き出していたが、8月に入って値を下げ、日経平均を下回った。

 ひふみ投信のリターンが高いのには、ファンドマネージャーの能力以外に二つ理由がある。米国株を含むことと、小型株を多く含んでいることだ。

 ひふみ投信は2割程度、AmazonやVisa、マイクロソフト等の急成長している米国株を含んでおり、その分日本株のみの投資信託よりリターンが高くなっている。これは資産配分は自分で決めるから日本株ファンドは日本株だけで運用して欲しいと考える投資家には不評だが、高いリターンの米国株だけをピンポイントで保有できるという点では悪くないとも言える。

 小型株が良いのは小型株効果が働くからだ。
 小型株効果効果とは時価総額が大きな大型株より、小さな小型株の方が長期のリターンが高くなることで、研究により実証されている。これは小型株の方が倒産等のリスクが高いので、その分リターンが高くなっているからだと言われている。
 しかし、小型株は常に大型株よりリターンが高いわけではない。下げ相場の時は大型株より下げるが、上げ相場の時に大きく上げるから、トータルとして上回るのだ。

 投資家達がイケイケの状態になっているリスクオンの時は、ハイリスク商品である小型株やさらにリスクが高い新興国株に資金が流入し、急速にリターンが改善する。一方、リスクオフの時は大型株や米国株のような手堅い株に資金が集中し、小型株や新興国株はだだ下がりになる。

 前掲の図1を見ると、2月末から5月にかけての上げ相場の時には、中・小型株のみで構成されるJPX日経中小型株指数が好調だったが、それ以降の下げ相場では大型株中心に構成される日経平均構成銘柄に資金が集まっていることが分かる。(TOPIXは大型株と小型株を両方含むので中間的な値動きになっている。)

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 図2にS&P500(米国)、TOPIX(日本)、MSCIコクサイ(先進国)、MSCIエマージング(新興国)の円ベースETFの値動きを示す。新興国株が下がり、米国に資金が集中していることが分かる。

 つまり、現在は国内市場も海外市場もリスクオフになっていることが分かる。

 投資家達がリスクオフになっている原因は二つある。一つは米国の中央銀行にあたるFRBが利上げをしていること。安全資産である米国債が高金利で買えるなら、わざわざリスクを取る必要はないと考えた投資家達が、リスク資産から資金を引き上げている。
 もう一つはトランプ大統領が仕掛けている貿易戦争だ。関税引き上げ合戦により景気が悪化するリスクが高まっているので、投資家がリスクを取りたがらないのだ。
 つまり、ひふみ投信のような小型株ファンドのリターンが悪化したのはFRBトランプ大統領のせいである。

 それでは、投資家のリスクオフはいつまで続くのだろうか。
 この原稿は日曜に書き始めたのだが、書いているうちにリスクオフ状態は弱まり、リスクオンに変わりつつある。
 グラフ末尾の8月24日にかけて上がり始めた各種指数は水曜時点でも上昇を続けている。
 原因としては、パウエルFRB議長の発言が利上げに慎重だと受け止められたことや、アメリカとメキシコが通商協定に合意したことが挙げられる。

 だが、このままリスクオン状態が継続するかは疑わしい。世界経済最大のリスクである米中貿易戦争は一向に解決していないし、トルコの通貨危機も危機のままだからだ。

 国内小型株のリスクは大したことないので、一時的にに下落したからと言って、すぐさまひふみ投信を売り払う必要はない。
 だが、よりリスクが高い新興国株を買うのは慎重になった方が良いだろう。

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