東雲製作所

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大井町のラーメン屋はこだわりが強い

 研修で二日間大井町に通った。大井町駅は品川の隣駅で複数本の電車が乗り入れている大きな駅だが、生活圏から離れているためこれまで降りたことはなかった。

 私はラーメンの食べ歩きが趣味だが、健康を考え、ラーメン屋に行くのは週に一回にしている。だが、大井町にはもう二度と訪れることはないだろうからと、二日間に三軒のラーメン屋をはしごした。

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 初日の夜は『アジトイズム』に行った。夫婦で運営している店で、天井の配管がむき出しになっているなど、内装も凝っている。

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 注文した『濃厚ピザそば』(850円)はピザの具を麺と混ぜあわせて食べるという斬新な混ぜそば。具はサラミ、ピーマン、玉ねぎ、トマト、アンチョビパウダー、クレソンなどがどっさりかかった本格的なもので、もっちりとした麺がチーズと混ざり合って美味しいが、この具なら麺よりピザの方が合うのではないかという気がしないでもない。

 

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 二日目の夜は『中華そば大井町和渦』に行った。店主一人にカウンター数席しかないこじんまりとした店で、寿司屋のような雰囲気だ。

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 『三位一体』(850円)とわずか10円のディナー丼を注文。店主が無添加にこだわったスープは「完成品」なので胡椒などの薬味をテーブルに置いていないのだと言う。
 味の印象はポタージュラーメンといった感じ。ロールキャベツ、トマト、二種類のチャーシュー、煮玉子が配され、チーズがかかっている。麺はそうめんのような柔らかい細麺。野菜そのものの旨味が感じられる上品なラーメンだ。

 新しいラーメン屋のこだわりが強いのは良くあるが、老舗はどうなのか。

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 二日目の昼に行った『永楽 そば店』は飲食店が立ち並ぶ路地にある、いかにも昔からある町中華といった店で、大勢の客で混雑していた。

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 650円のラーメンを注文。中央にどっさりともやしが配され、横にチャーシューと煮卵が乗っている。ここまでは普通だが、特徴的なのはスープ。茶色いスープの中に細かい黒いものが多数浮いており、熊本ラーメンのような見た目なのだ。この黒いものは焦がしネギらしい。
 ほのかに苦く油たっぷりなスープは最初はそれほど美味しいと感じなかったのだが、何口も飲むうちに引き込まれた。毎日でも食べられるような癖になる味だ。

 普通の町では、オーソドックスなラーメン屋が数軒あり、独自色を発揮したこだわりの店が一軒あるかないかというのが普通だが、大井町では行った店全てこだわりの店だった。しかも、行き帰りに前を通ったラーメン屋も、一癖も二癖もありそうなラーメン屋ばかりだったのだ。

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 大井町には2016年までニコン大井製作所があり、今でも「光学通り」という名が残っている。こだわりの技術者達がこだわりのラーメン屋を育んだのかも知れない。あるいは、品川区民は高所得者が多いから、住民の舌が肥えているのかも知れない。大井競馬場行きのバスが出ていることもラーメン屋が多いことと関係しているのかも知れない。

 よそ者の私が驚く程のラーメン激戦区になっている大井町だが、ラーメンと言えば大井町などという話は聞いたことないし、地元の人も異常にこだわった店が集まっているのを、とりたててすごいことだと思っている風もない。
 世界はささやかな謎に満ちている。