東雲製作所

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カーリングはなぜ面白いのか

 平昌オリンピックで、カーリングの人気が盛り上がっている。2月19日夕方の時点で女子は4勝2敗、男子は3勝3敗と健闘している。
 はてブでも、日本代表女子の和気あいあいとした様子を報じた記事がホットエントリーに入っていた。

headlines.yahoo.co.jp


 キャラクターは別にしても、カーリングには見始めるとついつい見入ってしまう魅力がある。カーリングが面白い理由を考えた結果、カーリングはルール上つまらない試合になりにくいということに気がついた。その理由を述べる。


1)一試合のうち10回緊張と緩和が繰り返される。
 人が面白さを感じる要素に「緊張と緩和」がある。野球の面白さは主に「緊張と緩和」から成り立っている。塁にランナーが溜まっていくにつれて緊張が高まり、ツーアウト満塁にでもなれば、緊張はマックスになる。その後点が入るかチェンジになるかすることでいったん緊張が緩み緩和が訪れる。観客は徐々に緊張が高まり一気に緩和されることの繰り返しに快楽を感じる。
 野球の場合、緊張と緩和が起こるかどうかは試合展開任せだ。例えば「チームAが初回にタイムリーヒットで3点取って以降は投手戦になり、お互いほとんどランナーを出せずに試合終了」みたいな試合の場合、観客が緊張と緩和を味わえるのは一回だけである。つまり面白い試合になるかどうかはやってみないと分からないということだ。

 カーリングは10エンド戦うが、エンドのラストショットは必ず得点にからむショットになるので、構造上緊張が訪れないということがあり得ない。また、緊張と緩和が多すぎると一回当たりの緊張が薄まってしまったり、緊張しすぎて疲れてしまったりするが、一試合中十回というのは多すぎず少なすぎず程よい回数だ。
 カーリングはルール上、必ず程よい回数の山場が出現するようにできている競技なのだ。


2)点差が離れるとコンシードするのでだれた展開にならない。
 スポーツは筋書きのないドラマと言われる。スポーツが面白いのはどちらが勝つか分からないから。大きな点差がついて、どちらが勝つか誰の目にも明らかな状態でだらだら続くスポーツほど退屈なものはない。
 だがカーリングではそんな心配は無用だ。点差が開いて逆転不可能な状態になると、負けている方のチームがコンシード(降参)を申し出て試合を終わらせるからだ。試合を見ていると、4点差ぐらいで潔くコンシードを申し出たりしていて感心してしまう。もし私が選手だったら、最終エンドを残して7点差でも、もしかしたら相手が全ショットミスるかも知れないし、と考えてしまって、降参できないように思う。


 一方、カーリングにもつまらない展開が存在する。ハウス(的)の中にストーンがなく、その手前にガードストーンもない状態で、チームAがストーンをハウスに入れる(ドロー)→チームBがストーンをぶつけて叩き出す(テイクアウト)というのをひたすら繰り返す状況になると、単なる的当てゲームになってしまってつまらない。

こういう展開はリードしているチームが守備的な戦術を採った場合に起きやすい。ハウスの中にストーンが溜まっている展開は、自他共に大量点を取る可能性が高まるから、リードしているチームがハウスの中を空っぽにしておこうとするのは合理的ではあるのだが、見ている方はつまらない。
 だが安心してほしい。日本代表は男女とも攻撃的なので、ドロー→テイクアウトの繰り返しというつまらない展開になりにくいのだ。


 韓国戦は日本代表女子の攻撃的な特徴が良く出た熱戦だった。最終第10エンド。得点は6対5で日本が1点リードだが、韓国が有利な後攻だ。難しい局面になり、日本がタイムアウトを取った。
 ここで日本には二つの選択肢があった。相手のストーンを叩き出して局面を単純化するか、ガードを置いて局面を複雑化するかだ。
 解説者は前者を押し、私もそうすべきだと思った。第10エンドで韓国に1点取らせれば、延長11エンドで日本が有利な後攻を取れるからだ。
 だが、日本はコーチと相談し、このエンドで勝ちに行くべく後者の戦術を取った。おいおい、大丈夫かよ。
 すると韓国が上手くショットを決め、韓国のNo1ストーンががちがちに守られてしまった。このままでは韓国に2点取られて逆転負けである。だから言わんこっちゃない。
 だがそこでスキップの藤沢選手は投げたストーンを、ハウスの中のストーンのまさにこの1点という場所に当てて押し込み、No1ストーンを奪い返してしまった。すげー!!
 日本俄然有利。だが、まだ韓国最後の一投が残っている。韓国のスキップに藤沢選手を上回るミラクルショットを決められたら再逆転だ。果たして――
 固唾をのんで見守る中放たれた韓国のラストショットはわずかに狙いを外れ、日本が1点を獲得。勝利した。

 日本女子が攻撃的戦術を取っているのは、性格的に楽天的だからというだけでなく、スキップ勝負になれば藤沢選手の方が相手より力量が上だと自信を持っているからかも知れない。