東雲長閑が2017年に読んだ小説のベスト10です。2017年発売作品のベスト10ではありません。
万延元年のフットボール 大江健三郎 講談社文庫
ノーベル文学賞受賞作家の代表作だけあって、非常に読み応えがある。感想を書く度に新しい発見があって、感想記事を三度も書き直した程だ。最近あまり読まれていないのがもったいない。
→万延元年のフットボール感想
その女アレックス ピエール・ルメートル著、橘明美訳 文春文庫
ミステリーランキングを総なめにした、ものすごくリーダビリティが高いミステリー。アレックスのキャラクター造形とトリックがすごすぎて、テーマについて深く考える気にならないのが難点。
→その女アレックス感想
罪と罰 ドストエフスキー著、工藤精一郎訳 新潮文庫
純文学だと思われがちだが、最近の作家で言うと東野圭吾+西尾維新みたいな内容だ。
→罪と罰感想
アズミ・ハルコは行方不明 山内マリコ 幻冬舎文庫
地方都市の閉塞感を書かせたら随一の作者による現代の福音書。
→アズミ・ハルコは行方不明感想
ビブリア古書堂の事件手帖7~栞子さんと果てない舞台 三上延 メディアワークス文庫
大ヒットシリーズの完結編。シェイクスピアの稀覯本を巡って、遂に栞子さんがラスボスの母と対決する。
「個々の力は劣っていても、二人の力を合わせれば強敵だって倒すことができる! 」というのは良くある展開だが、本作では力を合わせれば勝てることを定量的に示したのが画期的で感心した。
ビブリア古書堂の事件手帖7 ~栞子さんと果てない舞台~ (メディアワークス文庫)
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- 発売日: 2017/02/25
- メディア: 文庫
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君に恋をするなんて、ありえないはずだった 筏田かつら 宝島社文庫
非モテ男子とギャル系女子のすれ違いラブストーリー。設定に目新しさはないが、リアリティの高さに圧倒される。とりわけ非モテ男子のハリネズミのようになっている心の動きの克明さには目を見張るばかりだ。普通のライト文芸では書かないもう一歩踏み込んだ場所までリアリティを持って描き切ったという点もポイントが高い。
蓮見律子の推理交響楽 比翼のバルカローレ 杉井光 講談社タイガ
片手用ピアノ曲が左手用しかないといううんちくを基に組み立てられたミステリー。犯人の心情は直接描かれていないにも関わらず、どれだけの想いでこれを為したのかということがひしひしと伝わってくるのが素晴らしい。作中で展開される作詞、作曲論も興味深い。
コンビニ人間 村田沙耶香 文藝春秋
奇抜な発想と確かなリアリティがパッチワークになった過去に類を見ない小説。
→コンビニ人間感想
Re:ゼロから始める異世界生活 長月達平 MF文庫J
死ぬと本人の記憶意外全てリセットされるという『死に戻り』の設定が秀逸。生きる意味は行為が誰かの記憶に残ることで初めて生まれるのではないかということを考えさせられた。
→Re:ゼロから始める異世界生活感想
猫弁 天才百瀬とやっかいな依頼人たち 大山淳子 講談社文庫
全編にひねりとくすぐりが満ち満ちている、脚本家らしいユーモアミステリー。
→猫弁 天才百瀬とやっかいな依頼人たち感想
ノンフィクションでは『脳が読みたくなるストーリーの書き方』、『職業としての小説家』→感想、『アイデア大全』→感想、『ベストセラーコード』→感想 などが小説創作上有益で面白かったです。
アイデア大全――創造力とブレイクスルーを生み出す42のツール
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