東雲長閑が2016年に読んだ小説のベスト10です。例によって2016年発売作品のベスト10ではありません。
2016年のまとめなのにぐずぐずしている内に1月末になってしまいました。
りゅうおうのおしごと!3 白鳥士郎 GA文庫
「このライトノベルがすごい!2017」第1位。個性的な棋士達の将棋に対する熱い想いが胸を打つシリーズだが、特に作者が「自分がなぜ物語を書いているのか、どうして生きているのか、その理由を問い直すために書いた」とまで言う3巻は素晴らしかった。才能のない研修会員である桂香が力の限りを尽くして天才に挑む物語で、小説の才能がない自分だってあがけるだけあがいてやるという意欲をもらった。私が作家になれたら人生を変えた一冊になるだろう。
銃とチョコレート乙一 講談社
悪漢児童文学。ひらがなの多い児童文学らしい文体で書かれているのに次々と人間のクズみたいな悪漢が登場し、そのギャップがおかしい。特にいじめっ子のドゥバイヨルは小学生?なのにマフィアのボスみたいな凶悪っぷりで怖すぎる。
ものすごく子どもの教育に悪そうな内容なのだが、子どもが選ぶうつのみやこども賞を受賞したとのこと。作者が大人として子どもに読んで欲しい内容を書いたのではなく、子ども目線で読みたい本を書いたからだろう。
モコ&ネコ 桜庭一樹(このたびはとんだことで 桜庭一樹奇譚集、文春文庫収録)
この短編の凄さはモコ&ネコ感想に書いた。本短篇集ではインテリ女子の結婚プレッシャーを描いた「冬の牡丹」も素晴らしい。
桜庭氏の作品では『無花果とムーン』も考察しがいのある傑作。
→無花果とムーン感想
怪人二十面相 江戸川乱歩 青空文庫
銃とチョコレートとは逆に、探偵小説なのに起こる事件が牧歌的で楽しい。「ああ、名探偵明智小五郎と怪人二十面相の対立、知恵と知恵の一騎うち、その日が待ちどおしいではありませんか。」といった古めかしい語り口が今読むと逆に新鮮で面白い。
青空文庫は夏目漱石、芥川龍之介、太宰治といった純文学よりの作家が中心だったが、近年、吉川英治、江戸川乱歩と今でも普通に面白いエンタメ作家が次々著作権切れで追加されていて、充実っぷりがすごい。吉川英治や江戸川乱歩より面白くないと本を買ってもらえない訳で、今の作家は大変である。
死んでいない者 滝口悠生 文藝春秋
第154回芥川賞受賞作。この小説は何と言っても視点が不思議だ。神視点のようで必ずしもそうでもない。感想を書こうと思ったが捉えきれずに感想を書けなかった。
砕け散るところを見せてあげる 竹宮ゆゆこ著、新潮文庫NEX
普遍的な愛を描いた考え深い小説。
→砕け散るところを見せてあげる感想
螺旋時空のラビリンス 辻村 七子 集英社オレンジ文庫
椿姫+タイムスリップSF。何度でも運命に立ち向かうルフの姿に胸が熱くなる。
満願 米澤穂信 新潮社
とても完成度の高いイヤミス。完成度が高いのでとても嫌な気分になる。
→満願感想
晴天の迷いクジラ 窪美澄 新潮社
息もつかせぬ文章が圧巻。地方都市の息苦しい家庭の閉塞感が生々しく描かれていて、読んでいる方まで息苦しくなる。
→晴天の迷いクジラ感想
たんぽぽ娘 ロバート・F・ヤング著、伊藤 典夫訳 河出書房新社
ロリコンに惚れると苦労するという話。どんでん返しが鮮やか。
ノンフィクションでは仕事に効く教養としての「世界史」→感想、昭和史→感想、面白ければなんでもあり→感想などが面白かったです。
面白ければなんでもあり 発行累計6000万部――とある編集の仕事目録
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