東雲製作所

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サクラエディタを使って小説を要約する方法

 テキストのパターンマッチを使って小説の要約ができないかやってみた。
 正規表現が使えるエディタなら何でも良いのだが、ここではフリーのサクラエディタを使う。
 サクラエディタここからダウンロードできる。

 例として青空文庫の「走れメロス」を要約してみる。
(文中の『』はボックスの枠を表しているので入力しないで下さい。)

1)文章毎に改行する。
 下準備として段落内の文章を改行で分割する。
 まず、青空文庫の圧縮ファイル(1567_ruby_4948.zip)を解凍する。
 次に、テキストファイル(hashire_merosu.txt)をサクラエディタで開き、検索>置換 で置換ダイアログを開く。
 置換前に 『。』
 置換後に 『。\r\n』 
と入力し、正規表現にチェックを入れて、すべて置換をクリックする。
 読点の後ろに改行が挿入される。

 

2)「主人公~た。」という文を抜き出す。
 ここから重要な文を抜き出すわけだが、重要な文とは何だろうか。
 とりあえず、走れメロスから人力でストーリーを把握するのに最低限必要な文を抜き出してみる。

 メロスは激怒した。
 きょう未明メロスは村を出発し、野を越え山越え、十里はなれた此《こ》のシラクスの市にやって来た。
 歩いているうちにメロスは、まちの様子を怪しく思った。
 メロスは両手で老爺のからだをゆすぶって質問を重ねた。

 これらの文には共通点がある。文中に『メロス』(主人公の名前)を含み、『た。』で終わっているのだ。
 どうやら「主人公~た。」という文を抜き出せば良さそうだ。

 サクラエディタで文章を抜き出すにはgrepという機能を使う。

 検索>grep でGrepダイアログを開く。
 条件に『メロス.*た。』と入力する。
サクラエディタワイルドカードは * ではなく .* なので注意。)
 「現在編集中のファイルから検索」にチェックを入れて検索ボタンを押すと、「メロス~た。」を含む文が別ウィンドウに出力される。


3)不要な部分を消す。
 出力されたテキストには元ファイルの情報が書かれていて邪魔なので、これを消す。
置換前に 『^.*]:』
置換後は何も入力せず、全て置換をクリックする。(行頭から]:までを消せというコマンド。)
 行頭の」や振り仮名の《》が気になる方は同様に一括変換で消して下さい。

 こうして出来あがった要約は以下の通りだ。
 王とどういう約束をしたのかという肝心の所が抜けているものの、概ねどういうストーリーか分かるのではないだろうか。

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 メロスは激怒した。
きょう未明メロスは村を出発し、野を越え山越え、十里はなれた此《こ》のシラクスの市にやって来た。
メロスには竹馬の友があった。
歩いているうちにメロスは、まちの様子を怪しく思った。
のんきなメロスも、だんだん不安になって来た。
メロスは両手で老爺のからだをゆすぶって質問を重ねた。
 聞いて、メロスは激怒した。
 メロスは、単純な男であった。
調べられて、メロスの懐中からは短剣が出て来たので、騒ぎが大きくなってしまった。
メロスは、王の前に引き出された。
」とメロスは悪びれずに答えた。
「言うな!」とメロスは、いきり立って反駁《はんばく》した。
」こんどはメロスが嘲笑した。
」メロスは必死で言い張った。
メロスは、友に一切の事情を語った。
セリヌンティウスは無言で首肯《うなず》き、メロスをひしと抱きしめた。
メロスは、すぐに出発した。
 メロスはその夜、一睡もせず十里の路を急ぎに急いで、村へ到着したのは、翌《あく》る日の午前、陽は既に高く昇って、村人たちは野に出て仕事をはじめていた。
メロスの十六の妹も、きょうは兄の代りに羊群の番をしていた。
」メロスは無理に笑おうと努めた。
 メロスは、また、よろよろと歩き出し、家へ帰って神々の祭壇を飾り、祝宴の席を調え、間もなく床に倒れ伏し、呼吸もせぬくらいの深い眠りに落ちてしまった。
メロスは起きてすぐ、花婿の家を訪れた。
メロスも、満面に喜色を湛《たた》え、しばらくは、王とのあの約束をさえ忘れていた。
メロスは、一生このままここにいたい、と思った。
メロスは、わが身に鞭打ち、ついに出発を決意した。
メロスは笑って村人たちにも会釈《えしゃく》して、宴席から立ち去り、羊小屋にもぐり込んで、死んだように深く眠った。
メロスは、悠々と身仕度をはじめた。
さて、メロスは、ぶるんと両腕を大きく振って、雨中、矢の如く走り出た。
若いメロスは、つらかった。
ぶらぶら歩いて二里行き三里行き、そろそろ全里程の半ばに到達した頃、降って湧《わ》いた災難、メロスの足は、はたと、とまった。
メロスは川岸にうずくまり、男泣きに泣きながらゼウスに手を挙げて哀願した。
今はメロスも覚悟した。
メロスは、ざんぶと流れに飛び込み、百匹の大蛇のようにのた打ち荒れ狂う浪を相手に、必死の闘争を開始した。
一気に峠を駈け降りたが、流石《さすが》に疲労し、折から午後の灼熱《しゃくねつ》の太陽がまともに、かっと照って来て、メロスは幾度となく眩暈《めまい》を感じ、これではならぬ、と気を取り直しては、よろよろ二、三歩あるいて、ついに、がくりと膝を折った。
その泉に吸い込まれるようにメロスは身をかがめた。
 路行く人を押しのけ、跳《は》ねとばし、メロスは黒い風のように走った。
メロスは、いまは、ほとんど全裸体であった。
」メロスは走りながら尋ねた。
」メロスは胸の張り裂ける思いで、赤く大きい夕陽ばかりを見つめていた。
王様が、さんざんあの方をからかっても、メロスは来ます、とだけ答え、強い信念を持ちつづけている様子でございました。
最後の死力を尽して、メロスは走った。
陽は、ゆらゆら地平線に没し、まさに最後の一片の残光も、消えようとした時、メロスは疾風の如く刑場に突入した。
メロスが帰って来た。
」メロスは眼に涙を浮べて言った。
 セリヌンティウスは、すべてを察した様子で首肯《うなず》き、刑場一ぱいに鳴り響くほど音高くメロスの右頬を殴った。
 メロスは腕に唸《うな》りをつけてセリヌンティウスの頬を殴った。
 ひとりの少女が、緋《ひ》のマントをメロスに捧げた。
メロスは、まごついた。
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 参考までに羅生門の要約もつけておく。
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一人の下人《げにん》が、羅生門《らしょうもん》の下で雨やみを待っていた。
下人は七段ある石段の一番上の段に、洗いざらした紺の襖《あお》の尻を据えて、右の頬に出来た、大きな面皰《にきび》を気にしながら、ぼんやり、雨のふるのを眺めていた。
 作者はさっき、「下人が雨やみを待っていた」と書いた。
その上、今日の空模様も少からず、この平安朝の下人の Sentimentalisme に影響した。
選ばないとすれば――下人の考えは、何度も同じ道を低徊《ていかい》した揚句《あげく》に、やっとこの局所へ逢着《ほうちゃく》した。
 下人は、大きな嚔《くさめ》をして、それから、大儀《たいぎ》そうに立上った。
 下人は、頸《くび》をちぢめながら、山吹《やまぶき》の汗袗《かざみ》に重ねた、紺の襖《あお》の肩を高くして門のまわりを見まわした。
下人はそこで、腰にさげた聖柄《ひじりづか》の太刀《たち》が鞘走《さやばし》らないように気をつけながら、藁草履《わらぞうり》をはいた足を、その梯子の一番下の段へふみかけた。
下人は、始めから、この上にいる者は、死人ばかりだと高を括《くく》っていた。
 下人は、守宮《やもり》のように足音をぬすんで、やっと急な梯子を、一番上の段まで這うようにして上りつめた。
 下人《げにん》は、それらの死骸の腐爛《ふらん》した臭気に思わず、鼻を掩《おお》った。
 下人の眼は、その時、はじめてその死骸の中に蹲《うずくま》っている人間を見た。
 下人は、六分の恐怖と四分の好奇心とに動かされて、暫時《ざんじ》は呼吸《いき》をするのさえ忘れていた。
 その髪の毛が、一本ずつ抜けるのに従って、下人の心からは、恐怖が少しずつ消えて行った。
 下人には、勿論、何故老婆が死人の髪の毛を抜くかわからなかった。
しかし下人にとっては、この雨の夜に、この羅生門の上で、死人の髪の毛を抜くと云う事が、それだけで既に許すべからざる悪であった。
 そこで、下人は、両足に力を入れて、いきなり、梯子から上へ飛び上った。
 老婆は、一目下人を見ると、まるで弩《いしゆみ》にでも弾《はじ》かれたように、飛び上った。
 下人は、老婆が死骸につまずきながら、慌てふためいて逃げようとする行手を塞《ふさ》いで、こう罵《ののし》った。
下人はとうとう、老婆の腕をつかんで、無理にそこへ※[#「てへん+丑」、第4水準2-12-93]《ね》じ倒した。
 下人は、老婆をつき放すと、いきなり、太刀の鞘《さや》を払って、白い鋼《はがね》の色をその眼の前へつきつけた。
これを見ると、下人は始めて明白にこの老婆の生死が、全然、自分の意志に支配されていると云う事を意識した。
そこで、下人は、老婆を見下しながら、少し声を柔らげてこう云った。
 すると、老婆は、見開いていた眼を、一層大きくして、じっとその下人の顔を見守った。
その時、その喉から、鴉《からす》の啼くような声が、喘《あえ》ぎ喘ぎ、下人の耳へ伝わって来た。
 下人は、老婆の答が存外、平凡なのに失望した。
 下人は、太刀を鞘《さや》におさめて、その太刀の柄《つか》を左の手でおさえながら、冷然として、この話を聞いていた。
しかし、これを聞いている中に、下人の心には、ある勇気が生まれて来た。
 老婆の話が完《おわ》ると、下人は嘲《あざけ》るような声で念を押した。
 下人は、すばやく、老婆の着物を剥ぎとった。
下人は、剥ぎとった檜皮色《ひわだいろ》の着物をわきにかかえて、またたく間に急な梯子を夜の底へかけ下りた。
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