東雲製作所

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よくわかる眠たい狼神話を修繕せよ! 感想

皆様LNFお疲れ様でした。


狼と香辛料VI Side Colors 支倉凍砂 電撃文庫
シリーズ初のホロ視点話でホロのツンデレっぷり(とロレンスの凶悪っぷり)にくはぁ!となった。
しかしながら、このシリーズはこれまで「ホロが何を考えているのか分からない」という謎を牽引役にして物語を進めてきており、ホロ視点はオープンリーチをかけたようなものなので、今後が大変なのではあるまいか。

四畳半神話大系 森見登美彦 角川文庫
第三話までは普通に面白いが、最終話になると俄然、超絶的に面白い。
それにしても、本作を「ゲーム的リアリズム」の観点から論じた評論がネット上に見当たらないのはどうしたことだろう。

DOORS II新たなる敵を修繕せよ! 神坂一 スニーカー文庫
見た目は奇妙で派手だが、話の構造は「失われたものを取り戻す」というシンプルなものだし、扱っている心情はリリカルだ。
助詞止めで文をつないでいく独特の文体が、不安定な世界及び心情とよく合っている。

よくわかる現代魔法 たったひとつじゃない冴えたやりかた 桜坂洋 集英社スーパーダッシュ文庫
今回の副題は「たったひとつじゃない冴えたやりかた」だが、小説の中で示されたやりかたがこれはこれで「たったひとつの冴えたやりかた」であるように思えるので、「たったひとつの冴えたやりかたとは違うやりかた」といった意味に受け取るのが正しかろう。
今回の主人公、姉原聡史郎は「魔法の存在をまったく信じていない」ことになっているのだが、信じないというポーズをとっているだけで、無意識と意識の中間くらいの領域で明らかに信じており、どこまで信じていると信じたことになるのか考えさせられた。

鳥籠荘の今日も眠たい住人たち4 壁井ユカコ 電撃文庫
今回一番笑ったのは「最近老眼が進んで」という下りで、『イタズラなKiss』の「震度2で自宅が倒壊」というエピソード並の豪胆なギャグだ。
男性キャラの得体の知れない暴力的衝動をセーブして生きている感じが、女性作家らしい(男性作家が書くと得体の知れたへたれ感情を垂れ流して生きている感じになりがち)。