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東京ピラミッド魔術神父シュレディンガーが丘の感想

『砂糖菓子(ライトノベル)読者は私の男を読んでない』には『好きなら、言っちゃえ!! 告白しちゃえ!! 』をはじめとした複数のリンクと星を頂きまして有難うございます。
読んでない理由としてはShamrock's Cafeの分析が的確だと思いました。


東京奇譚集 村上春樹 新潮文庫
話の構造自体どれも大切なものを失って取り戻すというベーシックなものなのだが、肉付け部分が奇妙なため、かってないような小説群になっていて楽しい。
中でもユーモアとシリアスが入り混じった『品川猿』がとても好き。

とある魔術の禁書目録15 鎌池和馬 電撃文庫
激しい「動」のシーンが多い中、火葬場のシーンの「静」が実に効いている。
かなりの長期シリーズになってきたのに飽きさせないのは、着実に話が終局にむけて進んでおり、各巻の内容がバラエティ豊かだからだろう。

ブギーポップ・クエスチョン 沈黙ピラミッド 上遠野浩平 電撃文庫
最近のブギーは前衛小説風だったが、これはパンドラの頃の王道風だと思ったら、どうも舞台となっている年代も初期の頃に近いらしい(私は各話の相関について考えるのを既にあきらめているため分からなかったが)。
タイトルになっているピラミッドの謎は禅の公案のようで、考えはじめるとどこまでも考えられそうな魅力的なイメージだ。

嵐が丘(上) エミリー・ブロンデ作/河島弘美訳 岩波文庫
陰惨な復讐劇だと聞いていたので、読むまでもなく嫌いだと思っていたのだが、いざ読んでみると初期のハルヒが七人くらい登場してバトルロイヤルをやっているみたいな内容で、陰惨というよりはもういっそすがすがしい。
文学少女』シリーズではディーン黒幕説が紹介されており確かにそのようにも読めるのだが、この人も他の人と同様意地悪いだけなのに、語り手であるが故に特権的立場にいるように見えているだけではないだろうか。

ブラウン神父の童心 G・K・チェスタトン/中村保男訳 創元推理文庫
ミステリーの古典だが、飄々とした主人公や次々と繰り出されるトリックが全く古びておらず、メディアミックスすれば再ブレイクするのではないだろうか。
様々なシチュエーションの十二編が収録されているが、『青い十字架』や『奇妙な足音』など馬鹿ミスっぽい作品が気に入った。

シュレディンガーのチョコパフェ 山本弘 ハヤカワ文庫
収録されている七編の短編のテーマも構造も叙述もてんでばらばらであるにも関わらずどれもハイクオリティという奇跡の短編集。
『奥歯のスイッチを入れろ』で一シーンしか出てこない女性研究員に鮮やかな性格づけをしている所など、本当に細部までゆるがせにしていないよなあ。