東雲製作所

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文学ギャルエミリー感想

あけましておめでとうございます。今年も宜しくお願いします。
でもこの三冊は去年に読んだものです。

文学少女と月花を孕く水妖 野村美月 ファミ通文庫
私は姫倉麻貴のことが嫌いで、本作の読後もそのこと自体は変わらないのだが、気高く魅力ある人物であることは認めねばならないだろう。
遠子先輩と心葉が別れを迎えることが示唆されていて、今回の過去の事件の別れもそれと同じ構造な訳だけど、そう考えると「美しい夢は、目覚めたあと、心の中に物語を残すのよ」という言葉を遠子先輩がどんな気持ちで言っているか想像するだにたまらない気持ちになるのでした。

ギャルゴ!!!!! 地方都市伝説大全 比嘉智康 MF文庫J
主人公は自分が「人間以外の女性に愛される」という特殊能力を持つが故に女性に好意を寄せられていることに苦悩しているが、例えば「生まれながらに美形である」が故に女性に好意を寄せられている場合や、「生まれながらに性格が良い」故に女性に好意を寄せられている場合とそんなに変らないのだから、気にせず好意を受け入れれば良いのではないかと思う。
しかしながら、そんな主人公の思考はいかにもモテないおたくらしい誠実さで、複数のヒロインから好意を寄せられるというライトノベル的要求を満たしながら主人公がモテないという二律背反を達成している。

修道女エミリー 鉄球姫エミリー第二幕 八薙玉造 集英社スーパーダッシュ文庫
新キャラのグレンの視点を導入することで、成長し、人間的魅力を増したエミリーの姿を多面的に描き出すことに成功している。
二巻が出ると聞いた時にはどうやって続けるのかと思ったが、こうなってみると、弟が死んで動乱が起きて隣国が攻めてきてといった展開で、全五十巻ぐらいの大河小説にもできそうな設定だなあ。