東雲製作所

東雲長閑(しののめのどか)のよろず評論サイトです。

エンドロールまで彼女を禁ずミステリ感想

オフ会お疲れ様でした。特にへろへろな状態で骨を折って下さった平和さんには感謝です。
名前は知らないけどサイト名を聞くとおおっという方が多数参加されていましたね。

エンドロールまであと、 壁井ユカコ ルルル文庫
ぎをらむさんが言っていた桜庭一樹作品の構造分析がそのまま当てはまる作品であり、この構造は桜庭作品の特徴であるのみならず、成長ものとしてより普遍性を持っているのではないだろうか。
双子姉弟を一人の人物の二面性が具現化したものであるとみなせば「これが正解だ」というのはなるほどと思い、実際そういう抽象的な部分の鮮やかな作品ではあるのだが、具体的に考えればもっともやもやと割り切れないところに正解があるのではないかなあ。

マルティプレックス 彼女とぼくのコミイッタ日々 田村登正 電撃文庫
細かいところまでかっちり作りこまれていて、戦記ものとしてかなり面白い。
大設定のSF的説明に関しては完全に次巻以降に回されているので、何とか続きが出ると良いのだけれど。

ミステリクロノ 久住四季 電撃文庫
トリックスターズ』の感想の多くが「こんなもん分かるか!」だったのでアンフェアなミステリーを書く人なのかと思っていたのだが、これはちゃんと伏線が張ってあってフェアであったが、最終的な結論より否定された推論の方がより鮮やかなトリックではあるまいか。
海獺の読書感想文対策―本当はエロいミステリクロノ を読んで笑ったのだが、アニメージュの人生相談で富野由悠季さんが、大衆に支持される作品は潜在的エロティシズムを含んでいると指摘しており、久住さんも確信犯的に潜在的にエロくしている可能性が高い。

戒書封殺記 その本、持ち出しを禁ず 十月ユウ 富士見ファンタジア文庫
新人のデビュー作なのに、フェアで盲点をついたフーダニットになってるし、ストーリー展開に無駄がないしとかっちりした小説。
男性向けライトノベルに登場する美形ヒーローは、家具を愛しているとか髪がドリルだとか、とかく変なところがあるものだが、本作の月詠読破は普通に格好よく、逆に珍しい。