東雲製作所

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狼とミミズクの感想

何でライトノベルの新人は一時にまとめて登場するのだろう。同じ角川グループなんだから分散させてくれれば良いのに。

ミミズクと夜の王 紅玉いづき 電撃文庫
最終的には富士見ファンタジアの大賞をとりそうなわりと王道のファンタジーになり、エンターテイメントとしてはその方が面白いのだが、序盤の青木淳悟さんを思わせる訳分からない方向性のまま突っ走ってくれたら、いまだかって無かったような小説になったのではという点で残念でもある。
三人称なのに主人公の学習に伴って徐々に変化する文体は『アルジャーノンに花束を』を彷彿とさせる。

オオカミさんと七人の仲間たち 沖田雅 電撃文庫
男らしいヒロインや女装が似合う男が登場し、見かけ上は古典的性役割を破壊する物語のようでいながら、本質的には守護している点が興味深い。
空の上にいるらしい語り手は今後登場するのだろうか。

狼と香辛料IV 支倉凍砂 電撃文庫
夜の教会で交わされた二人の、ものすごく濃密で緊張感があって切ない会話にしびれた。
お互いお互いの気持ちに気づいているんだから、さっさとけりをつけてしまえよ! と思うのだが、結末がどうなったかでなく、二人で過ごした過程こそが大事なのだという考えに立てば、どんどん決着を引き伸ばすべきとも言える。