東雲製作所

東雲長閑(しののめのどか)のよろず評論サイトです。

感想いろいろ

半分の月がのぼる空8 橋本紡 電撃文庫
半月最後の短編集は秋山節を思わせる馬鹿小説から若い心の揺れを扱ったものまで幅広い。一般文芸の作品はわりと橋本さん得意の作風で勝負しているが、あらゆる技を使って読者に奉仕してくれているこちらの方が楽しめた。

100回泣くこと 中村航 小学館
モグラは0.00055馬力だとかなまねことかの小ネタが楽しい。だが、それだけの作品ではなくて、時々息を呑むような描写が登場するのだが、特に台所で水を飲むシーンは、主人公のコップを握った手のこわばりが伝わって来て、自分の手までこわばった。

夏休み 中村航 河出文庫
表紙の装丁や帯を見ると、リリカルな話のようだが、内容は最高の馬鹿小説だった。作者は「現実とフィクションの区別がつかないゲーム世代」みたいな紋切り型を逆手にとって示しているのかもしれないが、ヒロイン達が本気でやっているのだとすると見かけのほのぼの脱力した感じとは裏腹にこの理解不能なヒロインは結構怖い。