東雲製作所

東雲長閑(しののめのどか)のよろず評論サイトです。

アニメ

『姫様"拷問"の時間です』拷問官別拷問成功率まとめ

(本稿は『姫様"拷問"の時間です』のネタバレを含みます。) 『姫様"拷問"の時間です』(原作:春原ロビンソン、漫画:ひらけい、集英社)は私が最も連載を楽しみにしている漫画だ。1月からアニメも放送中だ。 「拷問官が美味しそうな食べ物などを使って姫様…

2023年テレビアニメベスト10

毎年恒例のアニメ年間ベストをお送りする。去年は5カ月遅れで発表したが、時季外れすぎてほとんど読んでもらえなかったので、頑張って1月に発表することにした。そのせいで、最後まで観れていない作品も多いが、本当に面白い作品ならすぐさま観たくなるだろ…

反劇的物語としての葬送のフリーレン

(本稿は『葬送のフリーレン』断頭台のアウラ編までのあからさまなネタバレを含みます。) 『葬送のフリーレン』(原作:山田鐘人、アベツカサ、監督:斎藤圭一郎、アニメーション制作:マッドハウス)は劇的物語のアンチテーゼとして設定されている。通常の…

最強キャラをどこに置くか――呪術廻戦感想

(本稿は呪術廻戦の抽象的な軽度のネタバレを含みます。) 作中最強キャラはどこに配置すべきだろうか。最強キャラが担う役割は大きく分けて三つある。1)敵、2)主人公、3)師匠だ。 1)最強の敵 最も多いのは敵が最強というパターンだ。小ボス、中ボスを倒して…

感動させたい時は感情移入させろ。笑わせたい時はさせるな。

(本稿は『鬼滅の刃』等のアニメのネタバレを含みます。) 海燕氏が「オタクは女の子になりたがっている? 「ポスト性同一性障害男子」は「政治的に正しい自慰」の夢を見るか。」という記事を書かれていた。 somethingorange.jp 海燕氏は「フィクションのな…

2022年テレビアニメベスト10

毎年恒例アニメの年間ベストをお送りする。去年のベスト10では何とか4月中には発表したいなどと書いていたが、5月になってしまった。 1)鬼滅の刃遊郭編(原作:吾峠呼世晴、監督:外崎春雄、アニメーション制作:ufotable)言わずと知れた鬼と鬼狩りの戦いを…

THE FIRST SLAM DUNK感想

(本稿は『THE FIRST SLAM DUNK』の結末までのあからさまなネタバレを含みます。) 2月中旬に『THE FIRST SLAM DUNK』(井上雅彦原作、監督、脚本)を観た。とにかくクライマックスのカタルシスがすさまじい。クライマックスの気持ちよさで言えば、過去見た…

22/7計算中season4感想

22/7は秋元康氏プロデュースのデジタル声優アイドルグループだ。メンバーはアニメ風のキャラクターと担当声優から構成されており、キャラクターとリアルメンバーの二形態で活動している。22/7計算中は2018年から放送されている22/7と三四郎によるバラエティ…

すずめの戸締まり感想

(本稿は『すずめの戸締まり』のネタバレを含みます。) 『すずめの戸締まり』は新海誠監督の最新作だ。公開初週に観たのだが、消化するのに時間がかかり、なかなか感想がまとまらなかった。観た直後は『君の名は。』>『すずめの戸締まり』>『天気の子』と…

機動戦士ガンダム 水星の魔女 第一話感想

(本稿は『機動戦士ガンダム 水星の魔女』と『少女革命ウテナ』のネタバレを含みます。) 『機動戦士ガンダム 水星の魔女』(原作:矢立肇、富野由悠季、監督:小林寛、アニメーション制作:サンライズ)が話題だ。ネット上の評判を見ると、ウテナだ百合だと…

映画ゆるキャン△感想―「楽しむ派」の設定に「為す派」の物語を接ぎ木するな

(本稿は『映画ゆるキャン△』のネタバレを含みます。) 『ゆるキャン△』(原作:あfろ、監督:京極義昭、アニメーション制作:C-Station)は私が最も好きなアニメの一つだ。それだけに、『映画ゆるキャン△』にはヒットして欲しい。映画がヒットすれば、TV…

明日ちゃんのセーラー服感想――興味はコミュ力に勝る

(本稿は『明日ちゃんのセーラー服』のネタバレを含みます。特に大きなネタバレは反転しました。) 『明日ちゃんのセーラー服』(原作:博、監督:黒木美幸、アニメーション制作:CloverWorks)はど田舎で育った明日小路がセーラー服に憧れてお母さんの母校…

2021年テレビアニメベスト10

2022年の第二クールが始まってしまったが、ようやく2021年テレビアニメベスト10を発表する。鬼滅の刃や王様ランキングのように年またぎで放送された作品は2022年版に回した。 1)無職転生 ~異世界行ったら本気だす~(原作:理不尽な孫の手、監督・シリーズ…

ブルーピリオド感想――クレイジーなことに挑む覚悟

(本稿は『ブルーピリオド』の抽象的ネタバレを含みます。)『ブルーピリオド』(原作:山口つばさ、総監督:舛成孝二、アニメーション制作:Seven Arcs)は主人公矢口八虎が東京芸大合格を目指すアニメだ。私は電撃小説大賞の応募作を仕上げている最中なの…

吸血鬼すぐ死ぬ感想――理論だけでは笑えない

(本稿は『吸血鬼すぐ死ぬ』のネタバレを含みます。) 『吸血鬼すぐ死ぬ』(原作:盆ノ木至、監督:神志那弘志、アニメーション制作:マッドハウス)は吸血鬼ハンターロナルドと吸血鬼ドラルクがコンビを組んで様々な吸血鬼と戦うギャグアニメだ。2021年のギャ…

「蜘蛛ですが、なにか?」に学ぶキャラクターの立て方

(本稿は「蜘蛛ですが、なにか?」の抽象的ネタバレを含みます。) 『蜘蛛ですが、なにか?』(原作・シナリオ監修:馬場翁、監督:板垣伸、アニメーション制作:ミルパンセ)は蜘蛛に転生した「私」を中心とした群像異世界ファンタジーだ。『蜘蛛ですが、な…

シャドーハウス感想――逆転・隠喩・二枚のカード

(本稿は『シャドーハウス』の抽象的なネタバレを含みます。)『シャドーハウス』(原作:ソウマトウ、監督:大橋一輝、アニメーション制作:CloverWorks)はユニークな設定のアニメだ。洋館「シャドーハウス」では貴族のような生活を送る顔のない黒づくめの…

スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました感想

『スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました』(森田季節原作、木村延景監督)(以下スラMAX)は異世界に転生し不老不死になった主人公アズサが、300年間コツコツスライムを倒していたら最強になっていたという出落ちのような小説が原作…

シン・エヴァンゲリオン劇場版感想――もっと脚本に労力を!

(本稿はシン・エヴァンゲリオン劇場版のあからさまなネタバレを含みます。) ようやく『シン・エヴァンゲリオン劇場版』を観た。 私のこれまでの新劇場版の評価は、序→かなり面白い、破→すげー!最高!!、Q→ひどすぎる、もう知らん!という感じだ。Qで心が…

プロフェッショナル仕事の流儀~庵野秀明スペシャル~感想

『プロフェッショナル仕事の流儀~庵野秀明スペシャル~』が話題になった。ネットでは異常なまでにクオリティを追及する庵野監督に振り回される周囲の人々に同情する意見が多かった。私は本放送を録画しておらず観られなかったのだが、5月1日の深夜に再放送…

2020年テレビアニメベスト10

2019年テレビアニメベスト10は2019年の年末に書いて発表した。 shinonomen.hatenablog.com だが、その後に放送された『慎重勇者~この勇者が俺TUEEEくせに慎重すぎる~』の最終回が滅茶苦茶感動的だった。これを観てから選定していれば、絶対ベスト10入りの…

神様になった日感想――下らない一瞬の価値

(本稿は『神様になった日』のネタバレを含みます。)『神様になった日』(原作・脚本:麻枝准、監督:浅井義之、アニメーション制作:P.A.WORKS)は平凡な高校生成神陽太の元に、全知の神を名乗る少女佐藤ひなが現れ、「30日後に世界は終わる」と告げたこと…

劇場版「鬼滅の刃」無限列車編感想――やり場のない悲しみが観客を駆り立てる

(本稿は『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』の抽象的だがあからさまなネタバレを含みます。またTVアニメ版の具体的なネタバレを含みます。) 11月1日に『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』(原作:吾峠呼世晴、監督:外崎春雄、アニメーション制作:ufotable)…

天晴爛漫!感想――ホームズは絶望しない。

(本稿は『天晴爛漫!』の重大であからさまなネタバレを含みます。) 「天晴爛漫!」(監督:橋本昌和、アニメーション制作:P.A.WORKS)は、自動車黎明期に実際に行われたアメリカ横断自動車レースを舞台にした冒険活劇だ。キャラクターが魅力的で夏アニメで…

乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった...感想~ハリウッド式作劇法へのアンチテーゼ

(本稿は『乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった...』のネタバレを含みます。) 一視聴者としてはとても面白かったが、一クリエイターとしては敗北感で打ちのめされた、というのが『乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生して…

ゆるキャン△と藤原拉麺店とカレー麺

ゆるキャン△は孤独の自由も仲間とのふれあいもどちらも等しく素晴らしいということを描いた、私にとって大切な作品だ。 shinonomen.hatenablog.com そんなゆるキャン界隈が1月からにわかに活気づいている。まず、へやキャン△というショートアニメが始まった…

2019年テレビアニメベスト10

今年は例年よりはテレビアニメを観たので、ベスト10を発表する。とにかく面白いもの、レコーダーに未見の作品があったら真っ先に見たいもの、という観点で選出したらメジャーなものばかりになってしまった。ジャンプ作品が4つも入っている。一時期低迷が囁…

他者にしか救えない――鬼滅の刃感想

(本稿は『鬼滅の刃』のネタバレを含みます。) アニメ『鬼滅の刃』(吾峠呼世晴原作、外崎春雄監督、ufotable)が素晴らしい。元々ストーリー・設定・キャラクターが魅力的な原作にufotableの神作画が加わってものすごい高みに達している。特に第十九話『ヒノ…

お姉さんじゃなきゃダメなんだ――天気の子感想

(本稿は『天気の子』のネタバレを含みます。) 『天気の子』(新海誠脚本、監督)は映像だけで観客の心を揺り動かす。花火大会のシーンはあまりの映像の美しさに泣いてしまった。 また、晴れと雨に対して観客が抱く感情が反転するという構成は何事も捉え方…

本心開示量が不適切な連中――かぐや様は告らせたい感想

『かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦』(赤坂アカ原作、畠山守監督)は相思相愛の白銀御行生徒会長と四宮かぐや副会長が、自分から告白すると立場が下になるからと相手から告白させようと画策しあうアニメだ。 第一話を見て、下らないプライドのた…