東雲製作所

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米国株の暴落をPERで予測する

 米国の代表的株価指数、S&P500が一月末につけた最高値に迫っている。

stocks.finance.yahoo.co.jp


 株価が上がるのは結構だが、上がり過ぎると暴落の危険も高まる。

 株がいつ暴落するかは予想できないというのが定説だ。だが、日本のバブル崩壊や米国のITバブル崩壊のように、株価の大暴落前には、株価が高騰し、割高になっていることが多い。
 そこで過去のS&P500暴落前の月次PERを調べてみた。

www.multpl.com


1)ITバブル崩壊世界金融危機

 市場では、概ね20%を超えるような大きな下落のことを暴落、小さな下落を調整と呼ぶことが多い。

 2000年以降に米国で起きた株価の暴落は2000年に起きたITバブル崩壊と、2008年に起きた世界金融危機の二回だ。

 ITバブル崩壊では2000年8/1に実績PER27.97をつけた後に3ヶ月で13.85%下落。多少持ち直した後続落し、7ヶ月で25.63%暴落している。
 世界金融危機では2008年8/1に実績PER26.83をつけた後に3ヶ月で33.51%、6ヶ月で52.28%も暴落している。

 このことから、実績PER=27近くになったら暴落の危険性が差し迫っていると言えるだろう。

 

2)その他の調整

 世界金融危機以降も5~20%の調整は何度も発生している。

 2010.4/1から2ヶ月で13.59%下落。直前PER=19.01
 2011.4/1から5ヶ月で18.18%下落。直前PER=16.21
 2012.3/1から2ヶ月で7.01%下落。直前PER=15.69
 2015.7/1から2ヶ月で8.90%下落。直前PER=22.4
 2015.11/1から3ヶ月で7.24%下落。直前PER=23.67
 2018.1/1から2ヶ月で6.58%下落。直前PER=24.97

 7%程度の調整は、PER=15.69というとりたてて高くないPERからも発生するということが分かる。
 S&P500のPERは2014年12月に20を超えてから、20以上を維持している。つまり、1月に起きた程度の調整を嫌がっていたら、米国株は全く買うことができない。米国株を買うなら、20%以下の調整リスクは引き受けるしかない。

 

3)2018年1月の調整

 2017年以降は、S&P500の実績、予想PERの週次データが存在している。

PER(NYダウ・ナスダック100・S&P500)の推移|株式マーケットデータ


 調整前のPERと現在のPERを比較すると次のようになる。

 日付   実績PER 予想PER 
 2018.1/26  23.34  18.67 
 2018.8/10  24.05  17.61

 実績PERでは1月末の暴落前につけた最大値を既に上回っている。予想PERはまだ下回っているが、いつ大きな調整が入ってもおかしくない状態ではある。

 

4)個人的対処法

 個人的には次のような方針で臨もうと考えている。

 S&P500の予想PERが18を超えたら少しずつ売ってキャッシュポジションを上げる。
 S&P500の実績PERが26を超えたら半分程売却して暴落に備える。

 なお、日本株や欧州株、新興国株は米国株よりは割安な水準で推移しているが、米国株がPER=27近くまで上がったら、ある程度売却してキャッシュポジションを増やしておいた方が良いだろう。米国株が暴落したら、割安だろうが何だろうが、世界中の株がつられて暴落するからだ。

トリックスターヒロイン――半分、青い。感想

(本稿は「半分、青い。」のネタバレを含みます。)

 「半分、青い。」(北川悦吏子脚本、NHK)について朝日新聞で「逃げるは恥だが役に立つ」の漫画家、海野つなみ氏が語っていた。海野氏は「半分、青い。」について、先が読めない面白さがある、観ていて心が動く、雰囲気づくりがうまくて言葉の力がある、と賞賛した上で、穴もあると指摘していて、具体例として次のように語っている。

 「例えば、鈴愛ちゃんが師匠の秋風羽織先生(豊川悦司)に「いい年して独り者で家族もない」などと怒鳴ったシーン。鈴愛ちゃんは謝らないし、周りも止めない。私が漫画で描くなら、心の声なりで「自分でもひどいことを言ったのは分かっていたけども、言わずにはいられなかった」みたいな描写を入れます。そうすれば受け手は共感できる。はたから見て共感しにくい場面を描く時にすごく大事なことだと思います。」

 海野氏の指摘は一般的な主人公の描写法として大変参考になる。だが、「半分、青い。」に関して言うと、必ずしも穴ではないと思う。鈴愛は普通のヒロインではなく、トリックスターヒロインだからだ。

 菱本が秋風先生に原稿を捨てるぞと脅したりできるのは鈴愛ちゃんだけだと語るシーンがあったが、これはまさに鈴愛がトリックスターであることを示している。トリックスターは既存の秩序を乗りこえて物語をかき乱す力を持つが、通常、脇役として登場する。
 主人公には1)受け手の共感を得る、2)ストーリーの軸を作る、という役割があるが、トリックスターはどちらの役割も果たしにくいからだ。

 多くの作品で、主人公は読者が自らを仮託して作品世界を体感するアバターとしての役割を持つ。主人公が視聴者の感覚とかけ離れた言動を取ると、視聴者は主人公に共感できず、作品に入り込めなくなってしまう。それを避けるため、主人公は多くの人が共感できるよう、常識的な善人であることが多い。
 一方、トリックスターは普通の人ができないことをやって隠れた真実を明らかにするのが役割だから、普通の人である視聴者の共感を得られない言動が多くなる。
 鈴愛は涼次に「死んでくれ」と言い放って物議を醸すなど、朝ドラヒロイン史上随一の暴言王だし、過去を都合よく説明してナレーターに呆れられるなど身勝手な振る舞いも多い。鈴愛の造形からは視聴者からの共感を犠牲にしても、「創作者の業」といった人間の本質をえぐることを優先するぞという北川氏の覚悟が感じられる。

 トリックスターをヒロインにしたために、ストーリーの軸も消滅している。一応、「律との恋愛」という軸は残っているものの、一度自らの手でへし折っているので、物語全体を貫いている軸はもう存在しない。
 通常の主人公には大目標があり、主人公がその目標に向かって進んでいくことで物語に軸ができる。
 私は途中まで「半分、青い。」を「鈴愛が漫画家として大成する話」だと思っていた。涼次は鈴愛が再び漫画家として立ち上がる力を得るまでの間、隣に寄り添う役割を果たす「移行対象」だろうと思って見ていたのだが、むしろ鈴愛の方が移行対象だったので驚いた。
 気ままな行動を取るトリックスターがヒロインであるため、ストーリーの軸が次々切り替わり、全く先が読めない。こんなに先が見通せないドラマは観たことがない。

 ぞくぞくするような狂気を表出させつつ、愛らしさで視聴者の共感も繋ぎとめている永野芽郁氏の好演ともども、先が非常に楽しみだ。

www.nhk.or.jp

バフェットは市場の効率性を利用して勝っている

 効率的市場仮説によると、公表されている情報は全て株価に織り込まれている。従って、公表されている情報をいくら分析しても、継続的に市場平均以上のリターンを得ることはできない。
 市場は集合知の正しさを利用したシステムだ。牛の体重を予想するのに、大勢の観客の予想を平均した値は、牛の専門家が予想した値よりも正確だったと言う。市場はあらゆる情報を素早く正確に織り込んで動くため、投資家が市場全体を出し抜いてより多くのリターンを得るのは難しい。

 だが、効率的市場論者が見落としていることがある。市場に参加しているプレイヤーの多くは数分からせいぜい数ヶ月程度で売買を行う短期投資家=投機家だ。彼らは短期的に利益を上げることを目的として行動している。巨額の資金を動かしているヘッジファンドのマネージャーは四半期毎に成果を出さねばならないため、短期的に値上がりが期待できる銘柄にしか投資しない。従って、市場では短期投資家にとって効率的な価格付けがなされる。
 短期的な値動きと長期的な値動きが異なる場合、長期投資家にとっては歪みが生じる。長期投資家はその歪みを利用して儲けることができるのだ。

 例えば、何らかの理由で今後一年間は株価が低迷し、その後は順調に上昇することが見込まれる株があったとする。今後一年間のリターンは0だと予想できるので、短期投資家はその株に投資しない。結果としてその株は、長期投資家から見れば割安な水準で放置されることになる。

 ウォーレン・バフェットの戦略は全て短期的な値動きと長期的な値動きの差異を利用したものだ。
 バフェットが投資をするのは、安定した収益が見込まれる優良企業が、1)相場全体の調整や暴落や2)一時的な損失によって値を下げた時だ。
 どちらも短期的に株価が低迷し、その後上昇することが見込まれるパターンであることが分かる。

 相場全体の調整時に短期投資家が投げ売りをするのは、短期的な利益という点では合理的な行動だ。株を保有しているとさらに下がるリスクが高まっているからだ。
 企業が一時的に損失を出した場合も同じだ。企業が訴訟に負ける等の理由で一時的に大きな損失を出した時、当該年度の利益が減少するため、株価は下落する。短期投資家にとっては保有していても利益が得られないわけだから、売却する方が合理的だ。
 だが、どちらの場合も、長期投資家から見れば、その後株価が上昇することが見込まれるわけだから、割安な歪みが発生しているのだ。

 逆の場合もある。市場の期待を集める急成長株ではPERが100を超えることもある。PER=100とは投資金額を回収するのに100年かかるということだ。利益の急成長が続けばもっと短期間で回収可能だが、利益の急成長は永続しないので、長期的に見れば高すぎる不合理な価格付けがされている。だが、短期投資家から見れば、上手く売り抜けられれば大儲けできるわけだから、合理的な価格なのだ。
 急成長株はバフェットが投資するパターンとは逆に、短期的には上昇し長期的にはどこかで下落することが予想される。長期投資家から見るとアホみたいな価格でも、短期的には合理的なのだ。

 バフェットは長年安値で放置されているが、フェンダメンタル分析の結果優れているから投資するというスタイルはあまり採らない。それより、一時的に値を下げた銘柄に投資することが多い。これはバフェットが市場の効率性をある程度信用していることの現れではないだろうか。もし市場を全く信用していないなら、過去に高値をつけていたかどうかなど全く気にせずに投資するはずだからだ。

 効率的市場仮説に対してよく、バフェットは継続的に市場平均以上のリターンを得ているじゃないかという批判がなされる。それに対し、効率的市場論者は、大勢が投資を行えばリターンは正規分布になるのでたまたま勝つ人も現れるのだと反論しているのだが間違っている。

 実際の市場は短期的にのみ効率的なので、短期と長期の値動きが異なる銘柄に関して歪みが生じることがある。
 バフェットは市場が短期的には効率的であることを利用して儲けているのだ。

 

バフェットからの手紙 第4版

バフェットからの手紙 第4版

 

 

どの国に投資すべきか2――バフェット流の検証

  5月16日の記事「どの国に投資すべきか」では株価が名目GPSと相関があり、新興国の予想名目GDP成長率が高いので、新興国に多く投資すべきではないかと書いた。

shinonomen.hatenablog.com

 しかし、新興国インデックスファンドの過去のリターンを見ると先進国と比べてそれほど良くもない。経済成長率は倍近いのにリターンはあまり変わらないということは、他の要素が存在するのではないか。

 その後、『億万長者をめざすバフェットの銘柄選択術』を読んだ所、バフェット氏は「安定成長するEPS(1株利益)」と「安定して高いROE」を重視していることが分かった。バフェット氏が言っているのは個別株の話だが、各国のインデックスファンドに当てはめて検証してみた。

 検証には5月16日の記事同様「世界各国のPER・PBR・時価総額」の2010年~2018年の3月のデータを用いた。
 ROE=PBR/PERなので、表から計算できる。EPSは分からないが、国全体に投資するわけだから純利益を比較すれば良いだろう。純利益は純利益=時価総額/PER で計算した。


1)純利益成長率の検証

  国・地域 純利益成長率
  全世界 10.85
  先進国 11.76
  エマージング 5.95
  ヨーロッパ 7.83
  アジア・パシフィック 23.92
  BRICs 4.84
1 アイルランド 29.29
2 フィリピン 22.04
3 オーストリア 21.22
4 台湾 20.02
5 韓国 16.63
6 オランダ 16.54
7 デンマーク 15.39
8 タイ 14.97
9 日本 14.06
10 ニュージーランド 13.78
11 中国 13.10
12 ポーランド 13.06
13 ノルウェー 11.99
14 米国 11.96
15 ドイツ 11.61
16 ベルギー 10.34
17 香港 9.60
18 スウェーデン 9.34
19 トルコ 8.86
20 カナダ 8.54
21 英国 8.53
22 オーストラリア 8.04
23 フランス 6.08
24 マレーシア 5.58
25 フィンランド 5.49
26 インド 4.51
27 チリ 4.04
28 スイス 4.02
29 インドネシア 4.01
30 ハンガリー 3.93
31 コロンビア 3.65
32 シンガポール 3.41
33 パキスタン 1.85
34 ロシア 1.84
35 イタリア 1.28
36 イスラエル 0.58
37 メキシコ 0.36
38 ペルー -0.83
39 スペイン -1.52
40 南アフリカ -2.07
41 ブラジル -6.44
42 チェコ -6.93
43 ポルトガル -7.89
44 ギリシャ -11.79
45 エジプト -12.00


 表1に2010年~2018年の各国純利益と純利益の年平均成長率を示す。年平均成長率は基本的には2018年と2010年のデータから算出したが、当該年のデータがない国は他の年から計算した。
 純利益成長率の上位五カ国はアイルランド、フィリピン、オーストリア、台湾、韓国となった。(オーストリアは2010年だけやたら低いのでやや疑わしい)
 日本は14.06%の9位になり、11位の中国や14位の米国を上回った。とかく低成長だと言われがちな日本だが、2010年~2018年の企業利益の伸びは世界的に見て高水準であることが分かった。

 地域別では先進国が11.76%、新興国エマージング国)が5.95%と先進国が大きく上回った。(数字上はアジア・パシフィックが1位だが、アジア・パシフィックで最も成長率が高いフィリピンより高いので間違っているものと思われる)

 新興国の主要メンバーである中国、韓国、台湾の純利益成長率は米国を上回っているのに、新興国全体の成長率は低いのは奇妙だ。そこで、構成国の割合を使って計算した所、先進国10.76%、新興国9.86%となり、差は縮まったもののやはり先進国が上回った。

先進国 構成割合 純利益成長率
アメリ 65.74 11.96 786.25
イギリス 7.05 8.53 60.14
フランス 4.33 6.08 26.33
ドイツ 3.97 11.61 46.09
カナダ 3.69 8.54 31.51
スイス 3.20 4.02 12.86
オーストラリア 2.69 8.04 21.63
オランダ 1.46 16.54 24.15
香港 1.37 9.60 13.15
スペイン 1.32 -1.52 -2.01
その他 5.18    
先進国上位10ヵ国 94.82 10.76 1020.10
       
新興国 構成割合 純利益成長率
ケイマン諸島(中国) 16.14 13.10 211.43
韓国 15.08 16.63 250.78
台湾 11.52 20.02 230.63
中国 9.68 13.10 126.81
インド 8.20 4.51 36.98
ブラジル 7.51 -6.44 -48.36
南アフリカ 6.62 -2.07 -13.70
ロシア 3.61 1.84 6.64
香港 3.29 9.60 31.58
メキシコ 2.92 0.36 1.05
その他 15.43    
新興国上位10ヵ国 84.57 9.86 833.84


 表2に構成割合と純利益成長率を示す。新興国ではトップ3の成長率は高いものの、成長率-6.44%のブラジルと-2.07%の南アフリカが大きく足を引っ張っていることが分かった。


2)ROEの検証

  国・地域 ROE
  全世界 12.01
  先進国 11.76
  エマージング 13.27
  ヨーロッパ 11.17
  アジア・パシフィック 8.37
  BRICs 13.49
1 パキスタン 25.46
2 インドネシア 21.06
3 ペルー 17.44
4 トルコ 15.58
5 インド 15.28
6 タイ 14.88
7 南アフリカ 14.77
8 チェコ 14.43
9 ギリシャ 14.38
10 スウェーデン 14.37
11 米国 14.25
12 スイス 14.23
13 中国 14.00
14 ポルトガル 13.93
15 フィリピン 13.91
16 デンマーク 13.85
17 メキシコ 13.51
18 エジプト 13.10
19 ロシア 12.87
20 ドイツ 12.37
21 イスラエル 12.34
22 マレーシア 12.17
23 フィンランド 12.15
24 スペイン 12.04
25 チリ 11.87
26 英国 11.68
27 香港 11.40
28 ポーランド 11.15
29 オランダ 11.13
30 アイルランド 11.07
31 オーストラリア 11.04
32 ニュージーランド 11.00
33 ブラジル 10.95
34 台湾 10.81
35 シンガポール 10.69
36 コロンビア 10.67
37 カナダ 10.66
38 ノルウェー 10.64
39 韓国 10.44
40 フランス 9.98
41 ハンガリー 9.97
42 ベルギー 9.83
43 イタリア 7.53
44 日本 7.44
45 オーストリア 7.31


 表3に2010年~2018年の平均ROEを示す。
 平均ROEの上位五カ国はパキスタンインドネシア、ペルー、トルコ、インドとなった。日本は下から二番目と世界有数の低ROE国である。
 純利益は順調に成長しているのにROEは低いということは、日本企業は利益に寄与していない資産を多く保有しているということである。きちんと再投資できていない資産に課税するなりして、再投資を促すべきではあるまいか。

 地域別では新興国(13.27%)が先進国(11.76%)を上回った。ただし、国別の結果から独自に計算した結果では、先進国(13.43%)が新興国(12.68%)を上回った。

3)どこに投資すべきか
 両指標はおおざっぱに言えば株式のリターンと一致する。

  国・地域 純利益成長率 ROE 平均
  全世界 10.85 12.01 11.43
  先進国 11.76 11.76 11.76
  エマージング 5.95 13.27 9.61
  ヨーロッパ 7.83 11.17 9.50
  アジア・パシフィック 23.92 8.37 16.14
  BRICs 4.84 13.49 9.17
1 アイルランド 29.29 11.07 20.18
2 フィリピン 22.04 13.91 17.98
3 台湾 20.02 10.81 15.42
4 タイ 14.97 14.88 14.92
5 デンマーク 15.39 13.85 14.62
6 オーストリア 21.22 7.31 14.27
7 オランダ 16.54 11.13 13.84
8 パキスタン 1.85 25.46 13.66
9 中国 13.10 14.00 13.55
10 韓国 16.63 10.44 13.53
11 米国 11.96 14.25 13.10
12 インドネシア 4.01 21.06 12.53
13 ニュージーランド 13.78 11.00 12.39
14 トルコ 8.86 15.58 12.22
15 ポーランド 13.06 11.15 12.11
16 ドイツ 11.61 12.37 11.99
17 スウェーデン 9.34 14.37 11.86
18 ノルウェー 11.99 10.64 11.32
19 日本 14.06 7.44 10.75
20 香港 9.60 11.40 10.50
21 英国 8.53 11.68 10.10
22 ベルギー 10.34 9.83 10.08
23 インド 4.51 15.28 9.90
24 カナダ 8.54 10.66 9.60
25 オーストラリア 8.04 11.04 9.54
26 スイス 4.02 14.23 9.13
27 マレーシア 5.58 12.17 8.88
28 フィンランド 5.49 12.15 8.82
29 ペルー -0.83 17.44 8.30
30 フランス 6.08 9.98 8.03
31 チリ 4.04 11.87 7.95
32 ロシア 1.84 12.87 7.35
33 コロンビア 3.65 10.67 7.16
34 シンガポール 3.41 10.69 7.05
35 ハンガリー 3.93 9.97 6.95
36 メキシコ 0.36 13.51 6.94
37 イスラエル 0.58 12.34 6.46
38 南アフリカ -2.07 14.77 6.35
39 スペイン -1.52 12.04 5.26
40 イタリア 1.28 7.53 4.40
41 チェコ -6.93 14.43 3.75
42 ポルトガル -7.89 13.93 3.02
43 ブラジル -6.44 10.95 2.25
44 ギリシャ -11.79 14.38 1.30
45 エジプト -12.00 13.10 0.55


表4は両者の平均を取ったものだ。
 両指標から判断した投資有望国上位五カ国はアイルランド、フィリピン、台湾、タイ、デンマーク となった。
 中国が11位、米国が13位、日本は21位となった。

 5月16日の記事で述べた通り、日本から安価な手数料で投資できる地域は日本、アメリカ、先進国、新興国の四地域である。
 過去8年間の純利益年平均成長率と平均ROEはそれぞれ下記のようになる。

純利益の年平均成長率
米国 12.0
日本 14.1
先進国 11.8 or 10.76
新興国 6.0 or 9.86

平均ROE
米国 14.2
日本 7.4
先進国 11.76 or 13.43
新興国 13.27 or 12.68

両者の平均
米国 13.1
日本 10.75
先進国 11.94
新興国 10.45

 つまり純利益とROEの観点からは 米国>>先進国>日本>新興国 であると言える。

 中国などの高い成長率のわりに新興国のリターンが冴えないのは、ブラジルなどの国が足を引っ張っているせいだということが分かった。

 これは過去のデータなので将来もこうなるというわけではない。
 だが、GDP成長率の差ほど、新興国投資が優位なわけではないようだ。

 

行為には責任が伴う――万引き家族感想

(本稿は万引き家族の抽象的なネタバレを含みます。)

 『万引き家族』(是枝裕和監督)を見終わった直後はそれほど傑作だとは感じなかった。確かに安藤サクラ氏の泣きの演技は素晴らしかったが、冗長な部分も多いように感じたのだ。だが、時間を置いて、感想を書くためにあれこれ思い返していると、次々新たな発見が出て来て、数日後には間違いなく傑作だという考えに至った。こういう感覚になったのは『この世界の片隅に』以来二回目だ。

 『万引き家族』は両義的な映画だ。あらゆることが良い面と悪い面の両面を持つよう、慎重に設計されている。
 家族関係は優しいが金目当てだし、犯罪に手を染めるのは生活のために仕方ない面もあるが、明らかにやりすぎな面もある。彼らが貧乏なのは社会のせいであり、自業自得でもある。
 花火が家から見えないシーンが象徴的だ。ビルに囲まれたボロ家から花火が見えないのは、社会の繁栄が彼らに届いていないことを象徴している。一方で、家を出て外に行けば見えるのに、そうしないからでもある。家族の心地良い関係は、彼らの心を慰めると同時に、日なたの世界へ出ることを阻害してもいる。

gaga.ne.jp

 徹底的に一面的なものの見方を排した本作だが、唯一明確に発しているメッセージがある。「行為には責任が伴う」ということだ。自分の行為は周囲に影響を及ぼすが故に責任が伴う。そのことを自覚することが大人の条件だ。
 子どもにやって良いことと悪いことを教えるのが親の役目だ。だが、本作の祥太に規範を教えたのは父の治ではなく、駄菓子屋だった。治はあらゆる責任から逃げ続けているが故にいつまでたっても大人になることができない。

 ラスト近く、祥太が治に重大な告白をする。これは最後のチャンスだった。治は息子にそんなことをしては駄目だと叱るべきだった。世間的には間違っていようとも父として息子に規範を示し、父親としての責任を果たすべきだった。だが、治はそうはせず、ただへらへらと受け流しただけだった。祥太はそのことによって完全に父に失望し、大人になる。

 あらゆる責任から逃げるということは、何一つ信念を持たないことでもある。柴田治というあまりにも悲しい男のことが頭から離れない。

 

blog.monogatarukame.net

 物語る亀の評論。バスのシーンを私は「振り返ったがもう父の姿は見えない」のだと思ったが、カメ氏は「父のことを思い返しつつ、彼らは成長する」と解釈されていて感心した。

投資信託の基準価額を予想する方法

 投資を始めて最も驚いたことの一つが、投資信託は当日の注文を締め切った後に価格(基準価額)が発表されるので、いくらで買えるか分からないということだ。
 もし商品に値札がついておらず、レジを通すまで値段が分からないスーパーがあったら、誰も行かないだろう。投資信託はスーパーで買う日用品より高いにも関わらず、みな値段が分からないことに唯々諾々と従っている。それなりの理由があるとは言え、奇妙な商習慣だと言わざるを得ない。

www.rakuten-sec.co.jp

 投資信託の値段は基本的に買った日の終値から決まる。日経平均TOPIXに連動する投資信託の場合、取引終了となる午後三時直前の値段を見て買い注文を入れれば、ほぼ連動した価格で買える。問題は外国株式の投資信託だ。

 外国株式も買った日の終値と為替から価格が算出される。だが、先進国株式の場合、日本時間の午後三時時点では欧州市場や米国市場は開いてすらいないので、終値がいくらになるか分からない。前日下がっていたからと買い注文を出すと、翌日は反発していて高く買うはめになることも多い。


 投資信託の基準価額は、同じ指標に連動するETFの値動きを見ればある程度予想がつく。

 例えば、eMAXIS Slim先進国株式インデックスのように、MSCIコクサイ・インデックス(円)に連動するインデックスファンドを購入する時は、MAXIS 海外株式(MSCIコクサイ)上場投信のように、同じ指数に連動するETFの価格を見ればよい。

stocks.finance.yahoo.co.jp

 

 ETFの取引価格は先物価格などを参考に投資家達が値動きを予想して売買した結果決まるので、ある程度近い値動きになる。

  eMAXIS Slim MAXIS海外株式
2018/6/1 -34 -217
2018/6/4 183 102
2018/6/5 81 86
2018/6/6 -5 -128
2018/6/7 123 158
2018/6/8 -35 5
2018/6/11 -40 -165
2018/6/12 125 103
2018/6/13 22 60
2018/6/14 -38 -69
2018/6/15 31 72
2018/6/18 -41 30
2018/6/19 -71 12
2018/6/20 -83 -149
2018/6/21 66 173
2018/6/22 -107 -129
2018/6/25 22 199
2018/6/26 -177 -219
2018/6/27 42 99
2018/6/28 -57 -57


 2018年6月のeMAXIS Slim先進国株式インデックスの基準価額とMAXIS 海外株式(MSCIコクサイ)上場投信の終値の前日比を示す。設定時の価格が違うので絶対値はだいぶ違うが、値動きの傾向は似通っている。

 2018年上半期の両値を比較した所、相関係数は0.78となり、かなり強い相関があった。

 ただし、相関係数は0.78であって1ではないので、全然違う値動きをすることもある。特に午後三時以降に大きなニュースがあった場合は、ETFにはそのニュースが反映されていないので、異なった値動きになるはずだ。


 投資信託の価格を正確に予測するのは難しい。どうしても正確な値段で買いたいのなら、ETFを買った方が良いだろう。
 

人のことを低能などと言ってはならない

  Hagex氏が殺された。
 出頭してきた容疑者は、色んな人に「低能」などといった罵詈雑言を浴びせかけていたことから「低能先生」と呼ばれていたらしい。
 もしこの容疑者の口癖が「低能」ではなく「はにゃーん」だったら「はにゃーん先生」と呼ばれていただろう。
 別に低能先生と呼ばれたから犯行に及んだわけではないようだが、低能先生などと呼ばれて気分が良いわけはない。
 低能などという言葉を使ったことが、自らの不幸を招いたのだ。

 

 ちょっと前にこういう増田記事があった。 

anond.hatelabo.jp

 確かにはてなにはこういう口の悪い人が結構いる。だが、それに影響されて悪口をエスカレートさせるのは良くない。
 何故なら、書いた言葉は自分に影響を与えるからだ。

 この増田も最初は周りが使っているからという理由で汚い言葉を使い始めたのかも知れない。
 だが、他者のことをバカ、アホ、低能などと嘲り続けていると本当に相手がバカなんじゃないかと思うようになる。
 そのうち自分だけが正しく周り中がバカだと感じるようになり、誰からも学ぶことができなくなってしまうのだ。

 

 容疑者は頻繁に他者に対し「殺す」などとidコールを飛ばしていたらしい。
 最初に「殺す」と書いた時、本人は本当に殺すつもりはなかっただろう。だが、何度も殺すと書き続けているうちに、その言葉が彼自身への呪いとなり、自らを縛っていく。そしてちょっとしたきっかけで、本当に人を殺してしまったのだ。

 もちろん、ほとんどの人はネット上で「殺す」などと書いても実際に殺すことはないだろう。だが、殺すなどと書きこむことが、自分の人格に良い影響を与えるわけがない。

 周りがどんな言葉を使っていようとも、「低能」だの「殺す」だのといった言葉で他者を中傷してはならない。相手を傷つけるだけでなく、書いた本人を歪めてしまうからだ。

 

 Hagex氏のご冥福をお祈り申し上げます。